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第44話
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「今度の日曜日、買い物に付き合って欲しいの!」
お昼休み、僕の持ってきた卵焼きをつつきながらそうお願いされた。
僕たちが卵焼きの取り合いをしていた所を見ていた朔夜さんが、別のタッパーに卵焼きだけを詰めて持たせてくれたのだ。それをさっきから千花ちゃんばかり食べている。そんなに食べて大丈夫なのだろうか。
「僕は全然いいよ。蛍ちゃんは?」
「私バイト」
「そっかぁ.......」
最近バイトを始めた蛍ちゃんはとても忙しそうだ。洋服屋さんのバイトらしいが、自分の興味のある仕事が出来て楽しいと言ってた。
蛍ちゃん、同い歳なのにしっかりしていてすごいなっていつも思う。僕も見習わないと。
「じゃあ律、日曜日ね!」
「分かった!」
友達と遊びに行くなんて初めての事ですごく楽しみだ。小、中学生の頃は転校が多くて、クラスに馴染めなくて当然友達も出来たことがなかった。
だからすごく楽しみなのだ。
「お母さんの誕生日プレゼントを一緒に選んで欲しいの!自分で決めるの不安で!」
「なるほど、分かった!」
お母さんの誕生日プレゼントか.......。そう言えばあげたことないかも。そもそも家にあまり居なかったし、会えなかったし、お母さんの誕生日すらあやふやだ。僕自身も誕生日を祝って貰ったことはないし、誕生日ってそういうものだと思っていた。
だけど千花ちゃんのお母さんの誕生日プレゼントだ。僕もセンスがいいとは言えないが、喜んで貰えるものを一緒に選ぼうと思う。
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