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第53話

*** 「りーつー!」 「うわっ!」 土曜日、指定された待ち合わせ場所で待っていると、後ろから体当たりされた。こんな事するのは一人しかいない。 「痛いからやめてよ、千花ちゃん」 「驚かせてやろうと思って!」 くふふ、とイタズラっぽく笑う千花ちゃん。制服姿じゃない千花ちゃんは女の子だった。 白のブラウスにデニムのスカートを履き、上からダボッとしたマウンテンパーカーを羽織っている。背の低い千花ちゃんだからこそ似合うスタイルだと思った。 「私服初めて見たけど可愛いね!すごく似合ってる!」 「へへ、ありがとう!律もダボッとしたパーカー似合ってるね!萌え袖可愛い!」 僕は朔夜さんに選んでもらった。初め着ていた服が黒一色で「お通夜にでも行くの?」と言われた。その格好では外出させないと、朔夜さんが選んでくれたと言うわけだ。 上の白のパーカーは朔夜さんに買ってもらったものだ。嬉しくて、袖を通すのが惜しくてずっとハンガーに引っかけたままにしていたが今日はとうとう着てしまった。 駅の近くにあるショッピングモールに入る。夕飯は千花ちゃんが作るらしく、夕方には帰れるように近場で選ぶことにした。 「お母さんお花が好きでね、お花をプレゼントしようと思うんだけど.......」 「いいね!きっと喜ぶよ!」 「でも、持って帰る間に元気なくなったら嫌だなぁって思ってさ.......」 それは確かにあるかも.......。千花ちゃんはここまで電車で来ている為、帰りも電車に乗って帰らないといけない。それに鉢植えとかだと持って帰るのが大変そうだ。 でも見た感じお花は鉢植えしかないみたいだし.......。 「あ、ブーケとかは?大きくなくても、ミニブーケみたいなの!」 「ありだね!見に行ってみよう!」 このショッピングモールにはお花屋さんが何店舗か入っている。その中でミニブーケを作ってくれるお店があるので行ってみる事にした。

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