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第10話

「おい藤本!何度言えばわかるんだ!」 「いっ……!」 久々に学校に行ってなんとなく体育に出た なんとなくひろきさんが沢山褒めてくれるかなって…… 予想はできてたはずなのに後悔した 「なんだその目は、ホモだからって俺の事変な目で見んじゃねぇぞ」 ケラケラと気持ち悪い笑いを見せるハゲの口の端に泡をためている体育教師 誰がお前なんかそういう目で見るかよ…… 地面に転がった体を起こして砂を払うと後ろから蹴られて再び転んで肘を擦りむく 「校庭20周、早く行け」 今日の気温は27度だぞ…… ついに暑さで頭がおかしくなったのかと思った 「行け!!!!」 蹴られて怒鳴られて渋々立ち上がって校庭を走り始める 生徒が集まってる所を通り過ぎるとクスクスと笑われる 擦りむいたところが脈打つ程痛い 蹴られた所が走る振動が来る度に痛い 自然と涙が溢れてくる 疲れた、帰りたい、なんで俺だけ 「おい!休んでんじゃねぇ!!」 何周走った……? 暑い…… 体がだるい……重い……気持ち悪い…… 目の前がグラグラする…… 「保健室行くぞ」 「っ……」 ふっと体浮き上がる だれ……? 「ちょっと和山先生〜……困りますよ授業中に」 「害悪なものから生徒を守るのが教師の役目なので」 「その子は、頭がおかしいんですよ 男が好きで普通じゃない ならそれを正さなければいけない、それが教師の役目です」 「同性が好きになる事がおかしいんですか? 随分と頭がお堅いんですね ですがそれとこれとは話が違います こんな暑い日に、校庭をこんなに走らせて 言ってしまえば人殺しに値します 生徒は教師のストレス発散道具じゃない では、失礼します」 涙が溢れてくる 俺を助けてくれた人は当たり前のようにひろきさんで俺が言って欲しかった言葉を言ってくれた 校舎の中に入った後俺に負担かけないくらいに急いで連れていってくれた 「大丈夫か ちょっと待ってろ」 「和山先生?授業は」 「自習させてます 何か体を冷やすものと冷たい水ください」 ぼーっと働かない頭で天井を見ているとおでこに冷たいものが当てられる 保健室の先生が心配そうにこちらを覗き込み何かを言っているがよく聞こえない 「先生今から出張だけど大丈夫? 救急車呼ぶ?」 「大丈夫です、私が見てますので」 「あら、そう? じゃあ和山先生にお願いしよっか? じゃあ藤本くん、先生出張行ってくるね」 頬を撫でられる感覚がするとひろきさんが呆れたように俺を見ていた 「ったく、無茶すんなって言ったろ」 ベットの端にしゃがみ頬杖を付き眉をゆがめる 「ごめ、なさ」 「あと、一度家に帰れ……」 「え……」 家に居てもいいって言ってくれたのにどうしてそんなこと言うの? なんで? どうして…… 鼻の奥がツンと痛くなり目の前がボヤけてくる 「スマホと、自分の着替えとか教科書もってこい あと、病院行け、俺じゃ連れていく資格がない」 「っ……」 「保険証だけでも持ってこい」 「はい……」

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