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第1話
恨むなら誰を恨もうか……。
あんな顔に生まれたあの男か?
それに群がる女子達か?
その群がる女子達を目当てにするクラスの男共か?
モテ男と一緒のクラスにした先生か?
それとも……身長の低いこの俺か?
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「泣くな遠藤!!男にはやらなきゃいけない時があるんだ!!」
「今がその時じゃないよね!?」
泣く遠藤と共に俺は今、仁王立ちで採寸を受けている。
「芝崎君、もう少し体を楽にしてくれないと正しく採寸できないよ」
宮本め……優しげな顔立ちに裁縫、料理、嫁として高スペックを要しながら、身長166cmでこの不運を脱した男。
恨めしく睨むが、こいつを睨んだ所で今のこの現況はこいつのせいではない。
「はい、いいよ。遠藤君も芝崎君も線が細いからきっと可愛いメイドさんになれるよ?」
悪意の無さが凶悪に俺の心を抉るわ。
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差し迫った学園創立記念祭。
うちのクラスは男子校において需要のよく分からない執事喫茶をすることになった。
何故か……それはアホな岡崎委員長殿が、外部の女生徒を呼び込みたいが為だ。
我がクラスが誇る、長めの前髪から覗く物憂げな瞳、いつも薄く開いた形の良い唇、いつもボケッと……ゴホン……アンニュイな空気を纏うイケメン、内田を餌にするつもりなのだ。
アホな岡崎め……いくらおこぼれを狙おうとも、内田目当てできた女子がお前に見向きなんてするはずが無かろう。
この記念祭で一番の被害者は俺だろう。
はじめは面倒くさいから自分は裏方へ回るとごねる内田を執事にするべく岡崎が内田からもぎ取った妥協案。
自分だけ見世物になるのは嫌なので、道連れを……だ。
165cm以下の奴はメイド服。
ふふふ……内田よお前の狙いはわかったぞ……。
内田と同じく、クラスで影の人気者。
遠藤にメイド服を着せたいからだろう。
不名誉な事に遠藤はこの男子校でモテている。
御愁傷様。
遠藤は岡崎に身長を聞かれて、涙を流している。
「次、芝崎。お前身長は?」
俺……俺か……。
「俺は167cmだ!」
岡崎の拳が飛んできた。
「遠藤が165cm。一番小さいお前が167cmな訳ねぇだろ!嘘つくんじゃねぇよ、チビ!!」
「チビ言うな!バカザキ!!遠藤がメイド服着るんだったら俺まで着る必要ねぇだろ!?俺がそんな格好して誰が喜ぶんだよ!!」
バカザキとやりあっていると、遠藤まで立ち上がって、
「酷いよ芝崎!!俺だけに押し付けて逃げる気!?」
おぅ……何か俺が我が儘言ってるみたいな空気になったぞ。
この騒動の張本人、内田は外を眺めてボンヤリしている。
顔は良いかも知れないが、あんな何考えているのかわからない奴の何処が良いんだ?女子達よ。
ミステリアス?あいつがモテることがミステリーだわ。
「まぁまぁ、遠藤君も芝崎君も俺が可愛く仕上げて上げるから安心してね?」
衣装担当になった宮本ののんびりした口調で間の抜けたフォローをされ、毒気を抜かれて一応その場は収まったのだった。
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