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第63話

「だァれがシャルに攻撃していいっつったんだよ、なァ?」  アリオを吹き飛ばした犯人──ガドは、はっ、と鼻で笑いながら長い足をストン、と下ろし、パタパタと軍服をはたいて整えた。  まさかの上司が犯人。  どうしてそうなった。  ガドはその足でそのまま俺の前に立ち、ケガがないかと全身を触り始める。  特に不快ではないので好きにさせていたが、服の中に手を入れそうになったので、流石に止めた。 「あぁぁアリオ! 生きろ! 死ぬなぁ!」 「ガド、ガド。俺よりお前の部下が木にめり込んで目を回しているから助けに行こう」 「ン? 大丈夫よう。竜人化中でも竜の皮膚は鱗に近い防御力があるかんな、無傷のはずだぜィ。俺の蹴りだって表面に毒霧も纏ってねーし」 「うわぁん長官の蹴りは普通じゃないですよぉーッ! おいオルガ! 回復かけろ!」 「もーやってるぜキリユ! アリオ! おい起きろ! まだ午後のティータイムでとっておきのはちみつベリーティーを飲んでないだろー!」  全く大丈夫じゃなさそうだぞ。  俺は少し騒がしい三人の軍魔たちに目をやり、吹っ飛んでしまった一人の安否を心配する。  目を回しているアリオに呼び掛け、ガドの発言に泣き言を言っている軍魔。  ちょっとあわてんぼうに見える、黄色い尻尾に羊のような巻角の竜人が──キリユ。  ぷかぷかと水の塊を浮かせてアリオの患部を包みながら、美味しい紅茶で呼び戻そうとしている軍魔。  青い尻尾に雄鹿の様な角が生えた竜人が──オルガ。  二人とも勲章やサッシュ(=たすき掛けの装飾ベルト)のないグレーの軍服を着ているから、あれがノーマルな魔王軍の服装らしい。  ガドの黒い軍服は、長官のものだろう。 「うぅ~ん……はっ! 気がついたら木の幹と熱烈ハグをかましていた俺はいったい!?」 「「あ、アリオ~~っ!」」 「ほら、無傷だろォ?」 「酷い暴論を見た」  しばらく治療を受けたのち、どうやらアリオは三途の川のほとりから無事帰還したようだ。  二人の同僚が涙ながらにやったやったと抱き合って、アリオの生還を喜んでいる。 「無傷は無傷、無罪放免。俺は素敵な空軍長官だぜ? シャァル?」  それを見ての、このサムズアップ。  ドヤ顔のガドに、早くなんとかしないと、と内心で頭を抱える俺だ。  そうこうするうちに完全復活した被害者のアリオは、なかなかに愉快な仲間二人と連れ立ってトコトコとこちらにやって来た。  見た感じだと傷は綺麗に癒えているが、訴えを起こすのだろうか。  そして俺の隣の銀竜さんめ。  やめろ、そのドヤ顔。 「ガド長官! 勇者に襲われていたんじゃないんですか?」 「俺たち助太刀しようと……!」 「いやァ? 喜びの遠心力とシャルの抵抗を楽しんでただけだぜ。いつもの俺らの遊びよ」 「ん。あれ以上回されたら洒落にならないが、そういうことだ。俺はガドを傷つけようとは思っていないので、安心してほしい」 「な、なるほど……! そうか、勇者はガド長官の遊び相手だったのか」 「俺たち、うっかりしちまったな」 「そうだな。うっかり八つ裂きにするとこだった」  ──だから、どうして魔族はこう過激なんだ……!  八つ裂きの刑をうっかりですませ、てへぺろをキメる竜人三人。  それをケラケラと笑うガド。  早くなんとかしないと、と思っていた俺は手遅れだと考えを改め、静かに遠くを見つめるのだった。

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