「不能になっちまったのかなァ、魔王の魔王……勇者来たし、アイツと知らねぇ間にシモの頂上決戦でもしてサイズ負けしたか？　聖剣見て自信なくなったのかもよ？」 「いや、一回は俺と夜の頂上決戦をしてくれるぞ。魔王の魔王は元気だ。だが再戦拒否されていてな……」 「シモネタが酷い」 　俺とガドは懸命に考えるがお互いにのんびりしているから結論がなかなか出ず、頭のいいユリスに意見を求めるべく見つめる。 　胡乱げなジト目をされたがなんでだ。 　正直なところ、俺は少し……いや、かなり欲求不満だ。 　あの日アゼルが掛け値なしに俺自身を愛してくれるとわかってから、俺はアゼルを見るとたまらなくて、胸の奥がきゅうきゅうと甘く締まる。 　嬉しいと好きが高まり、溢れたぶんのそれを伝えたいのと共有したいので今のままじゃ足りない。触れてほしくていっぱいにしてほしくて仕方ない。 　そもそも俺に身体の奥へ注がれる快感を教えたのは、アゼルなのだ。 　最中のアイツのものになっているという充実感は麻薬のように官能を蝕んでいて、すっかり手遅れな身体は中が疼いてくる。 　たった一回で中にいたアゼルが出ていってしまう時は名残惜しく締めつけるのだが、よりさっさと終わられてしまうのだ。 　うーん。散々執拗に人を開発してから、今になってなぜ聞き分けのいい男になってしまったのか。 　……まさかとは思うが、コレは倦怠期と言うやつなのでは。 「巷で聞くところ、付き合いたての恋人同士や熟年夫婦でも倦怠期があるらしい。もしかして、いやもしかするよな？」 「絶対ないでしょそれ。一緒に歩くと常時抱きしめてるのに。お前シながらなにか言ったんじゃない？　下手くそとか粗チンとかマンネリとか。魔王様はお前関連かなりナイーブでらっしゃるからね」 「いやいやゼッテェシモのサイズ負けだってェ〜。勃ってんなら質だろ？　フニャッてんじゃね。男は硬さだぜ」 「いや男としたの初めてだから比べようないが気持ちいいしアレは大きいしちゃんと硬いし俺はなにも、……残るはマンネリか」 「「あ〜」」 　また妙に納得した声を出された。 　やはり俺たちは傍から見てマンネリなのか。いったいどのあたりがだ？ 　浮かび上がった衝撃の事実にワナワナと震えながら過去の情事を遡るが、これと言ってなにも思い浮かばない。 　まったく真昼間から男三人でナニを考えているんだか。 　我に返るとマヌケそのものだが、今は死活問題だから見逃してほしい。 「シャルはァ……まー普段のキャラを見るにひたすら受けるだけだろうしな。イエスマンだから流されってか、なにやってもバッチコイって感じっぽいよなァ」 「そんなことないと思う。俺だって多少慣れてきてはいるから、余裕があれば腹の力の入れ具合を動きに合わせて変えてるんだ。もう身体が無意識に奥まで開くぞ。中だけでイケるしな」 「いやお前未経験ノンケだったよね！？」 　一応努力をしている旨を伝えると、ガドは笑ってユリスはスパコン！　と俺の頭を叩いた。相変わらずちっとも痛くない。 「なんでプレイ内容変えるより先に身体仕込まれてんの！　順番おかしいでしょ！　感度上げて奉仕するより先に知識つけるとかフェラとか騎乗位とか道具に嗜虐になんでもかんでも、王道プレイ試すべきじゃんっ！　シチュエーション変化つけるほうが開発するより早いからーっ！」 「な、なるほど……」 　勢いの収まらないユリスに努力の方向性を間違っていると指摘され、俺はワナワナと震える。なんてこったい。されるがままなのはよくないのか。 　アゼルが背を向けると潔くおかわりを諦める俺は、ぎゅっと手を握り拳を作った。 　かくなる上はいつかのように遠回りな誘いではなくガッツリ自分から誘い、マンネリ化しないように積極性を磨かねば……！ 「シャル、脱マンネリだ。魔王を誘惑する。セックスの勉強をしようぜィ」 「よしきた。ユリス先生、頼む」 「もおおおお、仕方ないね！　オーソドックスな誘惑を教えてあげるからさっさと押し倒してきなよどうせラブラブオチなんだからさっ」 　こうして恋のお悩み相談室は一転し、ユリスによる俺のための脱マンネリ講座が始まるのであった。 　これを身につけて今夜は寝かさないぐらい言わせてみせるぞ。俺は勉強熱心なほうだから期待していてくれ、アゼル。