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第177話

「アゼルこそ、俺は面白みもないしお前ほど強くない。それにお前に嫌われたら悲しくて辛くて生きていけないっていじけて涙が出るくらいには、面倒くさくて愛し方が重い」 「あぁ? どこがだよ。最高じゃねぇか」 「あははっ、それと同じ答えだ」  ぎゅっと首にまわした腕に力を込めて、茶目っ気たっぷりに笑った。  馬鹿だなぁ。  俺でいいのか? なんて質問は俺がするものだろう? こんなに綺麗で一途なお嫁さんが貰えるなんて最高すぎる。  そもそもお互い気持ちが離れたら一日だって我慢できない怖い愛を持ち合わせているんだから、俺たちは一緒に生きていくしかないんじゃないか。 「ふふふ。俺はお前のものだから」 「うぐぐ……っお、俺もお前のものだ」  絞り出すような声とともに、アゼルはしっかりと抱き返してくれた。  お前はすぐに不安になるな。  自分の対人能力には人一倍自信がないから、途端に臆病になる。  そのくせ俺が同じようなことを言えば、自信満々にとっぱらうのだ。  そんなアゼルが愛しくてにへらと笑って強く抱けば、たまらないように抱きしめ返してくる体温が酷く心地いい。  首筋にあった唇の感触が這い上がって耳朶にちゅ、と優しくキスをされる。 「……それで、最高なシャルは、ホントはどういう意味で俺にあんなこと言ったんだよ、なあ」 「に、二度言わされるのか……?」 「是非聞きてぇ」  アゼルは照れ顔を一転し、期待感いっぱいの表情で意図せずプロポーズになった必殺ワードの真意をほじくりかえした。  あまり何度も言うのは恥ずかしいのに、一連の行動が誘惑と知っていて再度聞いてくるアゼルは、イジワルだ。スイッチが入るといつもイジワルをする。  俺がうーんと考えていると、アゼルは口元をへの字に曲げる。 「言っとくが、別に、したくないわけじゃない。一回しかしなかったのは、気取ってただけだ」 「ん?」 「俺にあ、愛してるって言うお前は、最高にかわいいんだよっ。だから歯止めが効かなくて、負担かけたくねえからそっぽむいて寝てただけでっ……血だって、お前、毒がまわってる時ヤるの避けてたから、止める自信ねぇし……善意の自重だっ」 「っ……!」  ──そうだったのか! 俺はてっきりマンネリなのかと思って真剣に友人たちに相談していたりしたぞ……!  疑問が明かされ不安が霧散すると共に胸を押し上げる安堵と、それに伴ってトクンと心臓が高鳴る。  俺をかわいいなんて言うのは、世界中探したってコイツだけ。 「だから、言えよ……ココに、噛みつきたくて仕方ねぇんだ。もう我慢しねえから、俺を誘惑してみろ」  じっと見つめて低く囁くように誘われた。  誘惑しているのはお前じゃないか。にぶちんのくせに、気がついたらもう手玉に取ろうとしてくる。  ──誘惑、恥ずかしいんだがな。  俺が頷けば、愛しい獣が命の流れる管に牙を突き立てるのだ。  熱に浮かされたようなふわふわとした心地に襲われ、理性が無理矢理引きちぎられる。そうなったら抗えない。体に火がついて、求めるがままに快楽に耽るだけだ。  アゼルに触れられるのが嫌じゃない俺がその衝動に逆らえるわけなく、きっと思う様に貪り合い、抱き合う。  ……困るぞ。  お前のせいで、俺は引き裂かれたら死んでしまうところに噛みつかれる行為を、待ち望む男になってしまったじゃないか。 「……お前に血を吸われながら、めちゃくちゃに抱き殺されたいよ」 「ふ、上出来」  嬉しそうな賞賛が聞こえたと同時に──首筋にあてがわれていた鋭い牙が皮膚を突き破り、深く肉に食い込んだ。

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