──あぁ、死んだ。 　俺は今、死ぬのだと確信した。 　シャルと肌を重ねながら、いやその前から高鳴りっぱなしだった心臓が、生涯で後にも先にも一番だろうってくらいドクンと大きく脈動した瞬間確信したのだ。 　体中が焼け焦げているのかというほど熱く、頭がトリップして現実と遮断された脳は役に立たない。 　気持ちよくさせようと甘く噛んでいたシャルの項に、尖った牙を掠らせてしまう。 　その心臓の脈動は刹那で俺の魂ごと揺らし、呼吸が止まったと思ったら──俺はシャルの熱く柔らかでどこまでも吸いつく中に、ドロドロと溜め込んだ欲望を余すことなく吐き出していた。 　それでもまだ頭は理解できていない有り様だ。どういうことだ？ 　痛い。胸が痛い。死んだと確信するほどの、衝撃。 　──まさか俺は、愛の告白で、イったのか。 「っ、は……嘘だろ……なんだこの気持ち、なんだ……？」 　背中から覆いかぶさり、汗ばむ淫猥なシャルの素肌を抱きしめていた腕を解く。混乱する頭を抱えて、上体を起こした。 「ん…あっ……」 　突然動かれ、中に出された余韻に浸っていたシャルがか細く鳴いた。 　惚けたような表情はどう見てもリアルだ。 　こんなの嘘なわけねぇ。なら現実じゃねぇか。どうすんだ馬鹿。なんなんだこれは。 『この世界の誰よりも、お前が一番好きなんだ……っ心ごと、もうお前にしか染まれない……俺はお前だけが、欲しい……っ』 「ッ……くそ、勃った……」 　思い出しただけでゆるく芯を持ち、質量を増すモノ。 　俺当人よりずいぶん素直なそれに、そうするように俺が仕込んだ襞が、甘えるように絡みついてきた。 「は……ぁ、……ん……」 　完全にトンでいるのか、ヒクヒクと痙攣しながら宙を見るシャルはそれだけで肌を粟立て、ギュウとつま先を丸める。 　その光景があまりに刺激的で、ドッドッと弾けそうな心臓が全身に血を巡らせ、『さっさと所有しろ』と責めたてた。 　何度も何度も中のしこりを指先でトントンと叩き、ここにものが当たると気持ちいいということを教え込んだ。 　緊張やわずかな不快感すらも全身を舐めて、触って、噛んで、とろとろにして、丁寧に奪う。 「う、ぁく……っ」 　ズル……ッと腰を動かして内壁を擦りながら中程まで引き抜くと、シャルの中はほんの少し前まで無垢だったなんて嘘のような動きをした。それがまたたまらない。 「は……好き、だ……」 　俺はセックスだけじゃない原因不明の汗をにじませた。額を手で覆い、ぎゅう、と目を瞑り、唇を噛む。 　──好き、好き……好き。俺を、シャルが、世界で一番、好き。 　これは愛の告白だ。 　俺の知らない感情。それを俺にシャルが、向ける。シャルが俺に。 「好きだ、……って、こと、は」 「ッひ……あ、ぅ……ッ」 　ズブッ、と思考しながら深く埋め込むと、シャルは発情した声をあげて痙攣する。いやらしい体だ。 　でも、今までこの中に誰も受け入れたことがなかった。……俺以外。 　自分から誘ったくせに。そうしてもいいと思ったのは、俺が好きだから。 　それはつまり、そういうことだろ。 　シャルは俺と番おうと言っているのだ。 　そういうことって──俺は、俺は……？ 　憧れとか恩人とか血がうまいとか、恋なんてしたことがなかった俺は、それしかこの感情の訳を思い浮かばなかっただけで。 　死んでしまいそうな訳の見本を見せつけられた、今は？ 「ん、ふ……アゼ、ル……」 「……俺のだ」 　そんなことの答えは、ついさっき俺の体で証明した。 　だって俺は告白されてイってしまうぐらい、余すとこなく俺を感じさせた男にあんなことを言われて、シャルに抱いていた凶暴な独占欲と渇望が隙間なく満たされたのだから。