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第185話
「ん」
「ふん。起きたら、おはようのキスだ。そういうルールだろ?」
「んん……そうだな。ん」
固く胸に誓っていると、上機嫌なアゼルが嬉しげに俺の顔中へキスを降らせ始めた。
チュ、チュ、と降り注ぐおはようキスはとめどなくて擽ったいが嫌じゃない。
されるがままになりつつ、そのキスが大量なのでまだやる気スイッチがオフになってないのか、と少し呆れる。
アゼルはおはようのキスをどこで学んだんだろう。いつか一度でいいと教えてあげるが、今朝は……このままでいいか。
「いくらおおむね俺を弄んでいたとは言え、一晩中していたなんてタフ過ぎる……どうなっているんだ……」
「俺の体力を褒めやがれよ。我慢しないって言ったからな。シャルもノリノリだったし、まぁ仕方ないから応えてやったんだ」
ご機嫌ワンコな彼は最後に俺の頬にチュ、とキスをして舐めると、ドヤ顔を再び拗ね顔に曇らせる。
「なのにお前、意識トバしやがって……お前の感じてる顔を一晩中見つめながら抱いて、ずーっと正面からしてたのに。血も弱々種族が貧血にならねぇよう、ゆっくりちょっとずつ吸い続けて……」
「それのせいだ。絶対それのせいだぞ……!」
むっすりと唇を尖らせて語られるミステイクに、俺はぺしっとアゼルの胸を軽く叩いた。
毒が抜ける前に吸血されてまた落ち着きそうになったら吸われてなんて拷問か。
そんなことをするから俺が催淫毒無限ループでトビ続けていたんだろう。
しかもひたすら顔を見ながらただゆるりと抱いていただけなんて、アゼル、飽きないのか……!
様々な変態プレイで一晩潰されるより、じっくりノーマルなほうがなんだか照れくさい。
アゼルは俺の言葉にそんなばかな、とでも言い出しそうにポカンとしている。
お前は自分の毒に犯されたりしないから知らないだろうが、あれはちょっと……いやかなり、凄いんだぞ。
「くっ……もう、寝てる間に勝手に抱くのはダメだ」
「んな……っ!」
もぞもぞと腕の中で体を捻って、羞恥を隠すためにいつものアクセサリーがない剥き出しの胸板に顔を埋めた。
しかし、額に当たる胸の鼓動が普段より早いことに気がつき、恥ずかしさより嬉しさが勝ってスリスリ甘える。
「あうっ」
「夜通し抱き潰していたくせに、まだ触れられただけでドキドキするのか? お前は本当にかわいい男だな……」
「おっお前には言われたくねえ……! 俺はかわいくない、かっこいいって言えっ、かわいいのはお前のほうが、くう……っ」
「あっこら動くな、まだ中、っ」
真っ赤になったアゼルが俺を抱きしめたままモダモダと悶えるので、繋がったまま一緒に揺さぶられて散々擦られた内壁が刺激されるので、慌ててペシペシと軽く叩きやめさせた。
もちろんちゃんと痛くないように叩いているぞ? かわいい俺の婚約者だからな。
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