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1話/たいが
犬の名前は、河合椋
残念ながら犬ではなく人間だ。同じクラスの立派な男子高校生…のはずだが、どう見ても中学生にしか見えない。
182cmの俺に比べ頭ひとつ分以上低いから、150cmないんじゃないだろうか。
顔は平凡だけど、愛嬌があって人懐こいからクラスメイトだけでなく、他のクラスのヤツや上級生からまで可愛がられてる。
よく甘い菓子で餌付けされてるのを見掛けるし…。
むーくんだの、むっくんだの、むくむくだの、ムク犬だのと呼ばれて愛でられている。言わば学校のマスコット…ってよりまさしくペット的存在だな。
そんなムク犬の観察をするのが、いつの間にか密かな趣味になっていた俺。
宍倉大雅
ムク犬とは、クラスメイトであると言う以外にこれと言った接点はない。クラス委員長として、たまに声を掛ける程度の付き合いだ。
だが、河合椋の観察を始めてから俺には抑えきれない欲望が芽生えてきていた。
あのふわふわとした毛並みを思う存分撫で回したい。
膝の上に乗せて毛繕いをしてやりたい。
好きな場所に連れて行ってたくさん遊ばせてやりたい。
かわいいかわいいムク犬を俺だけのものにしたい。
…そんな欲望がどうにも止まらない…。
ちょっと危ない自分を自覚し始めた17才の春。
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