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15話/たいが
どうやら犬の鳴き声の正体はムク犬の腹の音だったようで、俺が聞いたら恥ずかしそうにコクンと頷いた。
そういやそろそろ昼時だし、泣かせた詫びもかねて飯に誘ってみるか。
「ねえ、良かったらどっかでお昼食べない?俺も朝食べてないからお腹空いたし、失礼な事言っちゃったお詫びに奢るよ」
ムク犬を誘う絶好の口実が出来たと浮かれる俺に、ムク犬は前に差出した両手をブンブン振った。手に持ったビニールの買い物袋が左右に揺れる。
「そんなの悪いからいいよ。帰ったらパンケーキ焼く予定だから大丈夫っ」
「パンケーキ?そう言えば河合って調理部だって言ってたね、お菓子も作れるんだ?」
「うんっ!お菓子は作るのも食べるのも大好きだから」
さっきまでの拗ねた様子は何処へやら…満面の笑顔でそう言うムク犬。本当に菓子が好きなんだな。
それを聞いて名案を思い付く。そう言えば財布に入れたままにしていたアレ…。
「じゃあこれはどうかな、知り合いから貰ったんだけど、ホテルビュッフェのチケットが二枚あるんだ」
そう言ってチケットを財布から取出して、ムク犬に見せる。
「河合も調理部なんだし、色々なお店の料理を食べて舌の経験値を上げるのはいい事でしょう?」
おっ?ムク犬の耳がピクッと反応したぞ。
「このホテルのシェフはフランスの三ツ星レストランにいたそうだし、味は保証出来ると思うよ」
おおっ?尻尾も揺れだしたな…よし、もう一押しだっ。
「それにこのホテルのデザートビュッフェは、常時60種類以上の様々なケーキを置いてるらしいよ」
潤んでいた目がキラキラと輝きを取り戻し、ムク犬の口からは涎が零れ落ちそうになってる。あまりの素直な反応に、吹き出しそうになるのを必死に堪えムク犬の返事を待っていると
「…い、行きたい…です」
小さな声でムク犬がそう言った。
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