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16話/むく

お腹の音を聞かれちゃった恥ずかしさに耐えてると、宍倉くんがお昼ご飯に誘ってくれた。嬉しいけど奢ってもらうなんて悪いし、そこまでして貰うほど怒ってるわけじゃないから断った。 そうしたら、宍倉くんは一介の高校生じゃ気軽になんて絶対行けない、高級ホテルのビュッフェチケットを出して来た。 貰い物のチケットだから、気兼ねはいらないよって事なんだと思うけど、気兼ねはしなくても気後れはしちゃうよ〜。 でも高級ホテルのビュッフェは魅力的過ぎて、気後れする気持ちより食べてみたい方に、気持ちが傾いていく…。そんな僕の気持ちを見透かすように、様々な誘惑の言葉を投げかけてくる宍倉くん。 舌の経験値…三ツ星レストラン…。 ぐらぐら揺れていた僕の気持ちの天秤は、最後の60種類以上のケーキって誘惑で、完全に食べたい欲望に傾いた。 思いがけない成り行きで、宍倉くんと高級ホテルでのビュッフェランチに行く事になったので、お母さんに電話をする。 「もしもしお母さん?」 『あら、むーくん。ずいぶん帰りが遅いから心配してたのよ?』 「うん、あのね。途中で友達と会って、一緒にお昼ご飯食べに行く事になったの」 『あらあら、そうなの。じゃあ気を付けていってらっしゃい、遅くなるようなら連絡ちょうだいね?』 「うん、わかった」 お母さんに連絡を入れて一安心。やっぱり心配かけちゃってたな…携帯持って出て来てて良かったあ。 携帯をパーカーのポケットに入れて宍倉くんを待つ。 僕が電話する間に、鷹取くんの家に行って来るって走って行っちゃったけど、何しに行ったんだろう? もしかして、鷹取くんも誘うのかな?でもそれなら電話すれば済むよね…。 色々考えを巡らせる僕の耳に、バイクの大きな音が聞こえて来た。

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