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17話/たいが

ムク犬を昼飯に誘うと云うミッションを、見事成功させた俺は足を調達するため、鷹取の家まで戻る事にした。 昨日は一人で街に出た所で昔のチームの奴らとたまたま会い、そのまま街で遊んでから鷹取んちに流れた為に、愛車は自宅に置いてある。 だもんで鷹取からバイクを借りるべく、奴の家に向かう傍ら電話を掛ける。数回の呼び出しの後、やっと繋がった携帯から聞こえてきたのは鷹取の寝呆け声。 『……あ〜、なんだよ』 「よう、悪りぃけどお前のバイク貸してくんねえ?」 『…お前、帰ったんじゃなかったのか』 「いや、ちょっと行く所が出来てな、もう下に着く。鍵だけ窓から投げてくれりゃいいから」 『…また女でも引っ掛かけたか』 ふわあ〜、と電話越しにデカイ欠伸をしながら、鷹取が厭味まじりに言うので言い返す。 「こっちから引っ掛かけた事なんて一度もねえよ」 『ああ、引っ掛かけられたのか。まあどっちだっていいが、お前がわざわざ俺にバイクを借りにまで来るなんて、どんないい女だ?』 からかいを含んだ鷹取の言葉に、考えてみりゃ俺が自分からこんな事をするのは初めてかもと思い至る。 大抵の場合向こうから寄って来てたし、自分から相手を何処かに連れて行こうなんて、思った事もなかったしな。実際、わざわざバイクを借りなくても、大通りに出てからタクシーを拾えばいいんだし…。 だが昼飯を奢られるのさえ遠慮するムク犬に、タクシーを使ったりしたら絶対恐縮してやっぱり行かないとか言いだしそうで、出来なかった。 それにアイツから貰ったチケットを餌にしてまで、ムク犬との時間を作ろうとするなんて、今迄の俺からしたら考えられない事ばかりだな…。 ムク犬の顔を見てたら何だってしてやりたくなるし、あいつの嫌がる事はしたくないとか思うなんて…。 これがこの辺りじゃ結構知られた、チーム“Simha”の元総長かと思ったら、我ながら笑える。

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