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71話/たいが

何だかんだで、結局俺と牛島、それに熊谷までが加わる事になり、二人の膳が整えられると食事が再開された。 「はあ〜、美味しいねえ〜」 味噌汁に口を付けた熊谷がしみじみと言う。 「昆布といりこのお出汁がきいてるし、ジャガイモはほっくほく〜。あ〜、幸せ」 熊谷は本当に嬉しそうな顔で料理を食べてる。けして綺麗な食べ方ではないが、ちびっこ達の料理を大事そうに丁寧に食べる熊谷は、最初の軽い印象とは違って見えた。 「お味噌も美味しいねぇ〜、凄く優しい味がする〜」 「だろー!コウ先輩のじいちゃんのお手製味噌は、天下一品だよなっ!ミツ先輩、結構味がわかるじゃん」 「わあっ、自家製のお味噌なんて凄い贅沢〜。ふふっ」 確かに家で味噌を作ってるなんて、今どき貴重だ。熊谷の素直な賛辞に、牛島も男らしいその顔を綻ばせている。 初めて間近で見るが、牛島は柔道部主将に相応しい堂々たる体格の持ち主だった。筋肉質なガッチリとした体躯、厚い胸板、大きな手足、さらに俺を上回る身長。柔道部は武骨な奴ばかりだと思っていたが、男の俺からみても羨ましいほどの肉体美と、鷹取とはまた違ったタイプの男らしい整った顔立ちをしている。 卯月とは昔馴染みなのか、調理部の奴らも牛島には懐いている様子だし、上機嫌な熊谷とビュッフェチケットで警戒心を解かれた俺を含め、食事の席は和やかに進んでいた。 ――が、 「あ〜、そうだぁ。コレ確かめときたかったんだ〜。ねぇ、むっく〜ん」 「なあに?」 「体育祭の対抗リレーで勝ったら、むっくんが貰えるって噂になってるんだけどホントなの〜?」 熊谷が投下した爆弾質問で、その和やかな場の雰囲気は一瞬で吹っ飛ばされた。 「ごほっごほ…っ」 「…だ、大丈夫?河合」 いきなりワケの分からないことを言う熊谷に、ムク犬が飯を喉に詰まらせかける。 「…いっ、一体何の話…!?」 「なんかあ、噂になってるんだよね〜。チーム対抗リレーで勝ったらぁ、むっくんと付き合えるとか〜、むっくんが貰えちゃうとか〜、むっくんが食べ放題とか〜?」 「ええっ!?ムク先輩が貰えるって…何だよそれ…」 「…ムク先輩…食べられる…の?」 一年生コンビがムク犬の方を見て、恐る恐る聞いている。 「…しっ、知らないっ知らないよーっ!そんな話っ」 「熊谷、なんだその妙な噂は…!潰してくるから出処を教えろ」 真っ黒なオーラを漂わせた卯月が、熊谷に詰め寄ると奴は人差し指をくいっと上げて、なんと俺を指差し言った。 「こいつ〜。それとB組の九条だよ〜」 調理室にいる全員の視線が、一斉に俺に注がれる。

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