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80話/むく
宍倉くんにお礼を言われて嬉しくなってたら、いっくんの事をすっかり忘れてた…。
ちょっと自分でも非道過ぎると思う…。いっくんゴメンナサイ!
「むーのお友達?」
「あ、うんっ!あのねっ宍倉くん、同じクラスでねっそれでね…っ」
いっくんを置いてきぼりにしようとした気まずさを誤魔化すように、慌てて宍倉くんの紹介をする僕。
そんな僕の言葉を聞いたいっくんの肩が、ピクリ!と動いた気がした。
「……ああ、君が宍倉君?以前、椋がお世話になったそうだね。はじめまして、兄の河合行 です」
笑顔で挨拶するいっくん。宍倉くんもいつもの王子様スマイルで、にこやかに挨拶を交わしてる。
ふわわっ、美形二人がニコニコしてると眩しい!
「いっくん、あのね。お弁当、宍倉くんが持って行くの手伝ってくれるって。せっかく車停めて来てくれたのに、ごめんね?」
「……そう、じゃあもう行くね。むーは張り切り過ぎて、怪我しないようにするんだよ?」
「大丈夫だよ!いっくんったら心配性なんだから」
「だって、むーは運動会のたびに張り切りすぎて、障害物競走の網に絡まって出られなくなったり、棒倒しの棒の一番上まで登って一緒に倒れたり、大玉転がしの玉の下敷きになったり、それから…」
「だからっ、それみんな小学校の時の話でしょ!」
…ううっ、お母さんと云い、いっくんと云い、どうして昔の僕の恥ずかしい話を聞かせちゃうんだよう〜。馬鹿馬鹿っ。
「安心してください。今回、河合が出場するのは、危険のない種目ばかりですから」
宍倉くんがすかさずフォローしてくれた。…んだけど、なんだか笑いを堪えてるみたいに見えるのは、気のせいじゃない…、よね。
うう…。
「そろそろ行こうか河合、始まっちゃうよ?」
「あ、うんっ。いっくん、じゃあね」
「ああ、頑張っておいで」
笑顔で手を振るいっくんに、手を振り返しながら道路を渡り、正門を抜けると綺麗に飾り付けられたアーチが、体育祭の雰囲気を盛り上げてくれていた。
さあっ!いよいよ本番だよっ。
うんっと、頑張ってチームを優勝に導くお手伝いをするんだっ!
えいえいおーっ!!
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