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81話/たいが

弁当を奪った男は、なんとムク犬の兄だと名乗った。だが、マジでムク犬と血が繋がってんのか?と、疑いたくなるくらい全然似てねぇ! 姉貴と母親は、ムク犬とよく似たほんわりした感じの可愛いタイプだったが、兄だと言うこの男は、ノンフレームの眼鏡をかけた知的な印象だ。それに加え全体的に色素が薄く、サラサラの髪は艶やかで、切れ長の綺麗な目は長い睫毛に覆われてる。 ムク犬と似た所と言えば、165cmあるかないかの低めの身長くらいか。 ……ガン飛ばさなくて良かった。 胸を撫で下ろす俺の横で、ムク犬が兄貴に俺を紹介してくれる。…が、俺の名前を聞いた兄貴が一瞬ピキッ!と反応した気がした…。 笑顔で自己紹介をしてくれているが、眼鏡の奥の目が笑っていねぇ〜っ!ムク犬の話から、兄貴がブラコン気味な気はしていたが、俺の下心を見抜かれていたりするのだろうか…。 内心冷や汗掻きまくりな俺だったが、ムク犬が兄貴の手伝いを断ったので、どうやらこの場を離れる事が出来そうだ。 別れ際、昔の話を暴露されて怒るムク犬を、嬉しそうに微笑んで見る兄貴。笑うとずいぶん柔らかい印象になるんだなあ。ああしていると、やっぱりムク犬と兄弟なんだなと思える。 しかし兄貴の話を聞いて、やはりムク犬を危険性のある競技に参加させなくて良かったと、心底思った。網に絡まったり、大玉の下敷きになるムク犬を思い浮かべて、吹き出しそうになるのを堪えながら、兄貴に安心して貰えるように一言添える。 ムク犬の出場競技は、100m走とパン食い競走、それに借り物競走の3種目のみ。どれも潰されたり、絡まったりする心配はないので安心だ。 今日は、本気を出していくぞ!力の差を思いっきり見せ付けて、九条と熊谷は勿論の事、ムク犬を狙う他の奴らにアピールしてやる! さあっ、闘いの始まりだ!

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