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93話/たいが

「海老フライうっめぇ〜!プリップリでカラッと揚がっててスゲー俺好み」 「筑前煮も味が染みてて美味しいねぇ。こうゆうのをお袋の味って言うんだろうね〜」 次々とリクエストした料理を上機嫌で食べてる九条と熊谷に、海老は市場まで買いに行ったとか、煮物の味付けは母親仕込みだとか。 その楽し気な様子に折角のカツサンドに手も付けず、またも不機嫌モードを発動してしまう俺。そんな俺を見たムク犬が不安気に尋ねてきた。 「…えっと、宍倉くんサーモンサンドとハムサンドもあるよ?」 その言葉とムク犬の様子に我に返る。ムク犬が俺の為を思って作ってくれたカツサンドに手も付けずにブスくれて心配させるなんて、何やってんだ俺! 慌てて頬張ったカツサンドは、染み出す肉汁とソースが絡み合い、それにキャベツの歯応えが重なって滅茶苦茶旨い! 「うわ…、旨い!このカツサンド肉がジューシーで凄く美味しいよ。河合は本当に料理上手なんだね」 俺がそう言うと、不安気な顔は消えムク犬は満面の笑みを浮かべた。その顔に俺は自分の小ささを恥ずかしく思いながらも、やはり料理上手な嫁は最高だなと思うのだった。 でっかい重箱二つ分の料理は、食べ盛りの高校生男子四人を前にあっという間に綺麗に平らげられた。 「美味しかったぁ〜。むっくんご馳走さまぁ」 「あー旨かった、腹一杯だ!本当に有難うなムク、ご馳走さん」 「ご馳走さま河合。凄く美味しかったよ」 「お粗末さまでした。いっぱい食べてくれてありがとうっ」 俺達3人が口々に礼を言い、それにムク犬が重箱を片付けながら嬉しそうに返す。 重箱を片付けたムク犬は、保冷バックから小さめのホールのレアチーズケーキを取り出した。 それをスナックボードの上で切り分け、アイスティーと一緒に配ってくれる。 爽やかな五月の風が吹き抜けていく中庭で、食後のデザートタイムが始まった。

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