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92話/むく
白熱のクラブ対抗レースは、宍倉くんトーイくんミツくん3人共が勝利者と言う、僕には嬉しい結果で終わった。
わぁい!これでみんなにお弁当を食べて貰える。
お昼休憩に入ったので、宍倉くんと調理室に置いていたお弁当を取りに行こうとしたら、トーイくんとミツくんも追いてきてくれた。
本当にみんな優しいなぁ。
お弁当二つを宍倉くんが、昨日のうちに作っておいた飲み物とデザートをトーイくんが、取り皿やコップをミツくんが持ってくれて、僕は軽いピクニックシートだけを抱えて中庭に向かった。
シートに座る3人の前で、頑張って作ったお弁当を広げていく。
一の重にはお握り、二の重には巻き寿司とお稲荷さん、そして三の重にはサンドイッチ。
もうひとつの重箱にはお肉をメインにした主菜と様々な副菜たち。
お重箱の蓋を開くたびに3人が歓声をあげてくれる。えへへー!早起きして頑張った甲斐があったなぁ。
「美味しい〜。むっくんのお稲荷さん最高〜っ」
「お握りの塩加減も丁度いいし、どの具のお握りもすっげー旨い!ムクすげえなっ」
料理を口にしたミツくんとトーイくんが絶賛してくれる。ふわわぁ〜!そんなに誉められたら照れちゃうよぅ。でもでもやっぱり嬉しいなぁ。えへへー。
ミツくんとトーイくんの賛辞に照れながら、宍倉くんの方をチラッと見た。そしたら宍倉くんはムッツリした顔をして、全然料理に手をつけていなかった。
あれ…?もしかしたらカツサンド、あんまり好きじゃなかったのかな。宍倉くん優しいから好きじゃないって言えなかったのかも…。
「…えっと、宍倉くんサーモンサンドとハムサンドもあるよ?」
心配になって話し掛けると、宍倉くんは僕の声に一瞬はっとして、すぐにカツサンドを頬張った。
「うわ…、旨い!このカツサンド肉がジューシーで凄く美味しいよ。河合は本当に料理上手なんだね」
カツサンドを一口食べた宍倉くんが、本当に美味しそうに言ってくれた。その一言で不安だった気持ちはどっかに飛んでいって、代わりにほわほわとした嬉しい気持ちが胸を占めていく。
ミツくんにもトーイくんにも褒めて貰ったのに、宍倉くんに褒めて貰えると幸せな気持ちで胸がいっぱいになるのは何でなんだろう。
僕もカツサンドをひとつ頬張りながら、ふわふわと膨らんでいくこの気持ちの正体が一体何なのか…。
それを知りたいような、このまま知らずにいたいような…。
自分でも良く分からない気持ちで、カツサンドを呑み込んだ。
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