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109話/たいが
くっそう!九条のヤツ、余計な事をベラベラと喋りやがって!B組の犬野郎も何擦り寄ってきてやがるんだ!
「よう大雅。無事にお姫様を奪還出来て良かったな?」
ニヤリと笑ってまた俺の肩に手を掛ける鷹取。
「そう言うてめえもお目当ての猫を連れて来れたみてえだが、他の奴みてえに構わなくていいのかよ?」
「猫は構い過ぎると逃げるからな。ゆっくりと飼い慣らすさ。それよりお姫様がなんだか不機嫌みたいだぞ?」
なんだかヤバい発言をする鷹取に目を眇 めていると、奴が妙な事を言ってきた。あ?ムク犬がなんだって?
気になってムク犬の方を見ると目が合った。すると、その目をツイっと逸らされる。
え…。なんか怒ってる?気になってムク犬に声を掛けようとした時、係員から声が掛けられた。
「本競技は終了しました。参加選手の皆さんはこちらにお集まり下さい!」
仕方なく集合するが隣に立つムク犬が何となくよそよそしい…。なんでだっ!?
「…あの、河合?」
名前を呼んでもこっちを向く気配はない。
むしろ距離を取られてるっ!?何でだ?何でムク犬は怒っているんだ?
「それでは今からカードの確認を行った後、順位とポイントを決定します。ではまず一着の宍倉ペア、カードの提示をお願いします」
係員のその声で俺は、はた、と思い出す。
「……………」
「宍倉選手、どうしました?カードを見せて下さい」
あー…、仕方ねぇ!俺は係員にカードを渡した。
「はい、では確認します。宍倉選手の獲物は犬、カードも犬です…ね…?うん?いや、待って下さい?」
係員が戸惑った声を上げる。まぁ、同然だな…。
「しっ、宍倉ペア失格ー!!宍倉選手のカードのイラストはゴリラですが、宍倉選手が捕獲したのは犬!従って獲得ポイントは0 ポイント!代わりにペナルティ50ポイントがマイナスされます!!」
「「「「ええええええええーーーーっ!?」」」」
会場全体から驚きの声が上がる。
まあ、そりゃそうだな。
係員の発表にソッポを向いていたムク犬も驚いた顔をこっちに向け、口と目玉を大きく開けている。でっかい目玉が落っこちそうだ。
『…なっ、何と言う事でしょうかっ!宍倉選手が引いていたのはゴリラのカード!!にも関わらず、捕獲したのはワンコなムク犬!!一体どう言う事でしょうかっ?』
どう言う事もこう言う事もねえさ!
ルールなんて関係ねえ。俺がムク犬以外の奴を捕まえる訳がねえだろうが。
俺がこの手に捕獲 たいのは、ムク犬一人だけだ!
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