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第36話 満たされる
「……んっ……ん、ふっ……」
「ティル……息、止めないで。ゆっくりでいいから」
「ゆう、ま……っ……」
「ほら……先っぽ、入った。分かる?」
「ん、んはぁっ……ゆうま、くるし……」
「動かないでいるからさ、ゆっくり息して……」
「はぁっ……はあっ……」
――痛いんだろうな。ティル、泣きそうだ……。
俺の指を握りしめていたティルナータの手に、力がこもる。なんとか先端は入ったものの、ティルナータはとても苦しそうだし、中も相当、きつい。ガチガチに勃起した俺のペニスを受け入れるには、ティルナータの肉体は細すぎるし、幼すぎる。でも、ここまできたらもう、止められない。ティルナータは俺を求めているし、俺だって、ティルナータと一つになりたい。
身を屈めて軽いキスをして、ティルナータの手を握り返す。もう片方の手で、きつく目を閉じてはぁはぁと苦しげな呼吸を繰り返しているティルナータの頬に触れると、ティルナータはうっすらと目を開いて俺を見上げた。
「上手だよ、ティル。……ほら、俺のこれ、ちゃんと飲み込んでくれてる」
「……ユウマ、もっと……奥に……」
「焦らなくていいよ。……キスしよ?」
もう一度、ゆったりとティルナータにキスをしていると、硬く強張っていた肉体から、ちょっとずつ力が抜けてきた。ティルナータをあやすようなキスを繰り返しながら、俺はもう少しだけ、ぐっと腰を押し進めてみる。すると、意外とすんなりと挿入が深くなる。
「ぁあ、あっ!」
「……っ……」
「ユウマ……っ……そこはっ……」
大きく開かれたティルナータの白い脚が、ぶるるっと震える。どうやら、ティルナータのイイところを、俺のカリ首がうまくかすめているらしい。俺は侵入することを一旦やめ、ほんの少しだけ上下に腰を揺らしてみた。するとティルナータはいやいやをするように首を振りながら、涙目になって身悶えている。
「ぁ、あっ……そこ、やっ……」
「いやなの? ティルの中……すごいよ。ひくひくして……俺のこと奥に引っ張り込もうとしてるみたいに……」
「はぁっ……はぁっ……! なんか、へん……ユウマ……っ……」
「やめてほしい? 怖かったら、やめるよ」
「やだ、やめるのは……っ!」
ティルナータはぎゅっと俺の腕を掴んで、艶やかな紅色に染まった唇から熱っぽいため息を漏らした。俺がもう一度腰を揺らめかせると、ティルナータは「ぁ、ぁっ……!」と顎を仰け反らせて、しなやかな首筋を無防備に晒した。
俺はそこにキスをして、首の付け根に痕跡を刻んだ。細い首筋から耳たぶにキスをしながらゆらゆらと腰を揺らしているうち、ティルナータの様子が少しずつ、変わってくる。
「ぁ……っ……ぁん、はぁっ……」
「いい感じ……もっと奥、挿れていいか?」
「うん……はぁ……ア……」
「すげぇ、気持ちいい……。ティル……大丈夫……?」
「ぼく、も……なんか、なんだか……っ……」
「イイの?」
「いい……、気持ちいい……もっと、深く……きて」
うっとりとした目つきで俺を見上げながら、ティルナータは可愛い声で俺を誘った。その表情があまりにもエロくて可愛くて、俺はティルナータにディープキスをしながら、細い身体を奥まで穿った。
「ぁ! ……ぁ、ユウマぁ……っ」
「……っ、やべ……イキそ……」
「あ、あっ……うっ……」
「痛くない……?」
「ん……うん……」
わずかに腰を引くだけで、腰が砕けそうになる程気持ちが良い。熱く熟れたティルナータの中は、一番最初の硬さが嘘のように甘くとろけはじめている。このまま激しく腰を振りたくなるのをぐっとこらえて、俺はティルナータと指を絡めて、何度か軽く、ティルナータの頬やひたいにキスをした。
「ぁ、あっ……そこ、いい……ンっ……」
「ここ……?」
「ぁっ……ぁ、あっ……ん」
ゆっくり、ゆっくり……と自分に言い聞かせながら、俺は慎重に腰を振った。そうでもなきゃ、自分勝手に腰を振りまくって、ティルナータの慣れない身体に怪我をさせてしまうところだ。
「ぁっ、ユウマ……っ……ぁ、んあ、なんか、きそう……っ」
「いきそう?」
「ん、んっ……ユウマ、ぼく、僕はっ……」
「大丈夫、イって見せて。……怖くないから」
耳元でそう言い聞かせながら、俺はほんの少しだけ抽送を速くした。同時にティルナータの胸の尖を指先で柔らかく捏ねてやると、ティルナータはびくん、びくんっ……と身体を大きく跳ねあげて、絶頂した。
「あっ……ァんっ……ん、んっ……はァ、んんっ……!」
「……っ……すげ、締まる……きつ」
「はぁっ……ぁ、あっ……はぁっ……ゆうまぁ……っ」
「すごいじゃん、初めてなのに、ここでイケるなんて」
「はっ……はぁっ……ユウマ、まだ、まだ止まらないよ……ぁ、ぼくは、どうしてっ……」
「中イキすると、そんな感じでずっと気持ちいいんだって。……ほら、どう?」
「ぁん……っ!!」
まだ身体に震えを残しているティルナータを、深く突き上げる。それだけでティルナータは甘くイってしまったらしく、全身を汗でしっとりと濡らしながら、陶然とした表情で俺を見上げた。
「もっと……もっと、動いていいのに……。ゆうまも、僕で、気持ちよくなってほしいんだ……」
「いやもう、十分すぎるくらい気持ちいいんだけどさ……でも、ちょっと、そろそろ限界かも」
「我慢しなくていい、から……もっと僕と、深くつながって……」
「……そんなこと言われたら……俺」
ずっとずっと動くのを我慢していたから、そんなふうに甘やかされると……ついつい欲張りになってしまう。俺はティルナータと片手を繋いだまま細い腰をしっかりと掴んで、さっきよりも激しく腰を使った。
「ぁっ、あ、あん、ん、あ」
「……ごめん、はぁっ……ティル……すっげ、気持ちいい」
「うっ……ん、ァ、あぁん、ゆうまっ……!」
「ごめん、いきそ……ごめん、痛かったら……はぁ……っ」
俺が腰をぶつけるたびに、しどけなく開かれたティルナータの唇から愛らしい喘ぎ声が漏れる。俺の手をぎゅっと握りしめながら、とろけるような表情で目を閉じ、かわいく乱れているティルナータのことが、愛おしくてたまらなかった。
「ぁ、ゆうまぁ……っ……! もう……ァん、いくっ……いくっ……!!」
「俺も……俺もまじでイキそ……ん、はぁ……っ」
「あぁ……!! ぅっ……ン……ん、んっ……!!」
ティルナータはぎゅっと俺にしがみつきながら、また激しい絶頂を迎えたらしい。きゅんきゅんとティルナータの中が甘く締まり、俺から精を搾り取るように絡みついてくる。
その感触があまりにも気持ちよくて、幸せで、俺はその直後にティルの中でイッた。互いをきつく抱きしめ合いながら絶頂感を共にしていると、汗ばんだ肌と肌がとろけあい、全てがひとつになっていくような感覚に陥る。
――このまま、消えて無くなれたら、どんなに幸せだろう……。
ふと、脳内にそんな考えが浮かび上がるが、それはあまりに夢想的だ。俺はゆっくりと腕に力を込めて上半身を起こし、乱れた呼吸を整えているティルナータの顔を見つめた。
俺の目線に気づくと、ティルナータは薄く目を開いた。重たげに長いまつ毛を上下して、涙で濡れた美しい瞳で俺を見上げる。まばたきした拍子に、すうっと一筋の涙がティルナータのこめかみを伝う。その涙をこぼしてしまうことがもったいないように感じられ、俺はすぐにその涙を唇で受け止めた。
「ティル……大好きだよ。愛してる」
「ん……ぁ」
「愛してる。今も、前世でも、ティルナータだけを……」
「ユウマ……」
「ほんっと、しあわせ。ティルと、こんなふうに……一緒にいられて」
「……ふふっ、僕もだ」
「ティル……」
ひたいとひたいをくっつけて、俺たちはしばらくじっとしていた。ティルナータの呼吸が穏やかなものになってゆくのを感じながら、俺はそっと目を開く。
腰を引いて、ティルナータの中からペニスを抜くと、途端に心細さが全身を襲う。まるで、もともとひとつだったものが、ふたつに分かれてしまったかのような……そんな感じがした。
ティルナータもそれは同じだったのか、「ぁ……」と切なげなため息を漏らしながら、もの寂しげに俺を見上げている。
「……ユウマ。もう一回」
「えっ、でも……大丈夫か?」
「うん。……もう一回、したい」
「……そ、そっか……。気持ちよかった?」
「うん、すごく。こんな満ち足りた経験は……生まれて初めてで……」
ティルナータは柔らかく微笑んで、俺の頬を両手に包み込んだ。そして俺の鼻先にちゅっとかわいいキスをくれると、天使のように無垢な表情をしながら、俺に腰をすり寄せてくる。
――……やばい、死ぬほど可愛い……。
「ユウマ……僕も、ユウマを愛している」
「……っ、そ、そっか。うん……照れる……っていうか、へへっ」
「時間の許す限り……こうしてたい。すごく幸せだよ、ユウマ」
「……うん、俺も」
自然と重なり合う二つの唇。
俺たちは何度も何度も深い口づけを交わし合い、身体を重ねて、時を過ごした。
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