竜蛇×犬塚 甘々SS

 

サイトのアンケートお題で書いたSSです。

なまぬる~い目で楽しんでください。


本編設定と同じですが、微妙にパラレルということで。 (一応、本編「光の入る部屋」の辺りの時間軸です。)

 

「琥珀の蛇と傷だらけの犬」/竜蛇×犬塚/同棲生活/激甘/溺愛/接吻/ツンデレ

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 


竜蛇の自宅に犬塚が連れ帰られて数日が経った。

 

この夜も犬塚は竜蛇に激しく抱かれた。ぐったりした体を抱きかかえられて、風呂場へ運ばれた。犬塚は指を動かすのも億劫だったので、素直に身を任せた。

 

「ほら、犬塚。洗ってあげる」

 

「いい。自分でやる」

 

壁にもたれるように浴室の床に座った犬塚は、口ではそう言うが、体は全く動かなかった。
浴室暖房の設置されている風呂場は心地よい温度で、このまま眠ってしまいたくなる。

 

「遠慮するな」

 

竜蛇はシャワーを出して、犬塚の裸身に湯をかけていく。

ボディソープを手に取り、犬塚の体を優しく洗い始めた。きっと、また良からぬ悪戯をされるのかと思ったが、竜蛇は犬塚の裸身を丁寧に洗い始めた。

 

「……ん」

 

温かい浴室とゆったりと柔らかく洗う竜蛇の手に、犬塚は心地よさげな吐息を吐いた。

 

首筋から、程よく鍛えられた胸に手を滑らせ、二の腕から指先まで。犬塚の肌の上を優しく丁寧に、竜蛇の手のひらが滑り、洗っていく。竜蛇は跪き犬塚の脚を持って、足指まで丁寧に洗った。

 

竜蛇の骨ばった指が足の指の股を滑る時、犬塚は少しだけゾクリとした。

 

「たつだ……」

 

竜蛇は優雅な微笑を唇に浮かべた。

シャワーで泡を洗い流し、犬塚の脚を抱えて親指を口に含んだ。

 

「あ……」

 

くちゅくちゅと舌で愛撫するように親指を舐めた。そのまま唇を這わせ、踝にキスをして足首を甘噛みする。犬塚が小さく、甘い声を漏らした。

竜蛇はそっと犬塚の足を床に下ろした。

 

「奉仕してやろう。犬塚」

 

「……は?」

 

竜蛇は跪いたまま両手を床に着いて、その美しい顔を犬塚の足の甲へと寄せた。

 

「竜蛇!」

 

ちゅ、ちゅ、と両足の甲にキスをする。

 

「今はお前が女王だ」

 

「なっ、誰が女王だッ!」

 

竜蛇は顔を上げて、犬塚をうやうやしく見上げた。

 

「命令してみろ」

 

「馬鹿な事を……」

 

犬塚の膝にキスをして、竜蛇が犬塚を促す。

 

「お前に尽くしてやる。さあ、何をして欲しい? 全身を舐めようか? フェラチオしてやろうか?」

 

竜蛇の舌が膝頭をぬるりと舐めた。犬塚の白い内腿がピクリと震える。

 

「命令しろ。犬塚」

 

「はぁ……っ」

 

犬塚は僅かに震える唇から吐息を吐いた。竜蛇は邪な微笑を浮かべて、犬塚を見ている。

濡れた金茶の前髪越しに見える琥珀の瞳が魅惑的だった。

 

犬塚は竜蛇の髪の濡れた様子が好きだった。

いつもの一分の隙の無い様子とは違って、濡れて色濃くなり崩れた前髪越しに琥珀の瞳で見つめられると、堪らない気持ちになる。

 

それにスーツを着ていないのも良い。竜蛇のスーツは鎧のようなものだ。

スーツを着て、髪を整えた姿はモデルのように決まっていたが、犬塚はあまり好きではなかった。一枚、薄いガラスで隔たれているように感じるからだ。


───今は違う。


竜蛇は美しい肉体を隠しもせずさらけ出している。濡れて乱れた髪越しに琥珀の瞳で犬塚を見つめている。

 

「……しろ」

 

「ん?」

 

犬塚は唇を舐めて、もう一度小さく命じた。

 

「……キス、しろ」

 

「犬塚」

 

竜蛇は美しい相貌に極上の笑みを浮かべて、犬塚の唇にそっとキスをした。犬塚はすぐに唇を開き、竜蛇の舌を求めた。

 

「……舌……寄越せ」

 

「……お望みのままに」

 

竜蛇は犬塚の口内に舌を滑り込ませる。互いの舌を甘く絡ませた。

 

「ん……ん……ふぅ……う」

 

唾液を交わらせて、深く、甘い口付けをする。

犬塚が竜蛇の濡れた髪に指を差し入れ、ぐっと引き寄せた。もっと欲しい、もっとキスしろと貪欲に竜蛇を求める。

 

後にも先にも、こんな風に甘く溺れるような口付けをするのは竜蛇だけだろう。犬塚はぼんやりとそう思った。

 

これが恋なのか、愛なのかは犬塚には分からない。

 

竜蛇は自分のことを愛しているという。いつもいつも。何度も甘く囁く。

そう言って、縛ったり、鞭打ったり。酷い事をする。


そんな真似は望んでなんかいない。


そうだ。望んでなんかいないのに……。

犬塚は竜蛇の責めにいつでも体を熱くさせ、絶頂に達してしまう。

酷く責め苛まれ、息も絶え絶えになった犬塚の頭を竜蛇は優しく撫でる。

 

『いい子だ。可愛い。愛しているよ。犬塚』

 

そう甘く囁かれると、犬塚の体をごまかしようのない歓喜が駆け巡る。

犬塚はそんな自分に戸惑う。自分には竜蛇のような悪趣味な性癖は無いはずだ。


……けれど、竜蛇のキスは、まるで麻薬のように犬塚を夢中にさせた。

欲しくて、欲しくてたまらなくなる。

 

「あ……」

 

ひとしきり舌を絡めあって、竜蛇の唇が犬塚の唇から離れようとした。

 

「だめだ……まだ……もっと」

 

「……犬塚」

 

犬塚はしなやかな両脚を竜蛇の腰に絡めた。竜蛇の頭を掻き抱いて、濡れた髪を乱して引き寄せる。

浴室の床に仰向けになった犬塚に竜蛇は覆いかぶさる。

 

「いくらでも……犬塚。俺に命令できるのはお前だけだ」

 

「竜蛇」

 

「お前にだけ従う。お前にだけ奉仕しよう」

 

竜蛇の舌が犬塚の唇をべろりと舐めあげた。

 

「は、あぅ」

 

犬塚はゾクリとして小さく震え、儚く鳴いた。

 

「愛しているよ。犬塚」

 

「あ……」

 

そうして再び。唇を密着させ、甘く深く、口付けた。犬塚を虜にする、甘い接吻だ。

 

犬塚は目を閉じて、竜蛇のキスに溺れていった。

 

 

 

おしまい。