めずらしく昼。

 

死者を出す灼熱煉獄から脱したと思ったら、朝方は毛布に包まって震えております、変温動物はつらいよ東永尋です。お久しぶりです。

滑り込みでサマーナイトコンテストに間に合ったので参加いたしました。気の向く方、お付き合いくださいませ。

 

実は『いのり』のたたき台的な文を発掘いたしましたので、ついでに載せます。ワタクシの思い違いでなければ、『この文だーれだ』企画で提出したものとなります。

 

…ただ、先に本編を読んでからでないと意味不明。

 

 

 

 

 

 

 


「……ふむ。忘れてやがるな、あの馬鹿」
 お供のかわいい朝顔ウチワに悪態を受け止めてもらいながら、夏生は半目で拳を握った。ミシリ。ウチワが嫌な音を立てる。
 裾を捌きながら進むも、どこを見渡しても己への迎えがない。
 気が向いたので、浴衣もせっかくあつらえたのに。去年は、夏祭りに行く約束を違えてしまった。今年こそはと意気込んだのもつかの間、早々に打ち砕かれ夏生は近くの石に身体を預けた。
 馬の迎えがないと、帰れない。
 まあ、普段の若者は盆暮れ正月は連休としての認識しかないだろう。自分だって去年まではそうだったのだ。そして更にヤツは社畜だ。
「帰るなってことかぁ」
 ため息をついて膝を抱える。もしかしたら、イイ人ができたのかもしれない。
「クソ馬鹿匂いフェチ遅漏絶倫デカチンムッツリ……」
 心赴くままに悪態を連ねた声音は、徐々に迷子のように。
「……でも、すき。行きたかった、な」
 夏祭りにではなく、あの男の元に。位牌は己の実家が手放さないだろうが、自分の戻る場所はあの武骨な腕の他はない。
 バサッ。
「……ハッ、ヘタクソ!」
 眼を見張ったのち手を伸ばした先は、見慣れた不格好な折り鶴──