小話

 

怒濤の連勤に一息つきました東永尋です、こんばんは。

ボチボチと『嘘つきへの処方箋』を更新しておりまして、佳境が過ぎたあたりですかね? あと数話で完結の文字を打てます。気が向いたら読んでくだされ。

 

普段機能を忘れて新しい話開始しても告知すらしないのに、今回オモテに出てきたのは一応理由があるのです。ええ、一応。

何の因果かフォローしてくださっている奇特者(失礼)に、日頃の御礼をと思いまして。

殊、『嘘つきへの処方箋』と『桜桃の憂鬱』の関係は、実は本編に関係するの以外はあるていど削っているのです。

…何を言いたいのかといいますと『御礼を兼ねて、倉庫に突っ込んだままの短編気まぐれに投下するよ!』

記事のタイトルは小話で統一したいと思っております(忘れていなければ)。

お付き合いいただければ幸い。

 

 

『嘘つきへの処方箋』より。R18

 

 

 

 

 

 自宅のソファに座り、テレビを見ながら、一磨はとてもとても緊張していた。映し出されている番組の内容はさっぱり頭に入っていない。むしろ、音声も右から左へそのまま通過している始末だ。
「も、もう、むり。離して、よ……」
「いやだ」
「そん、なぁ」
 泣きそうな声をして、一磨は項垂れた。その首も耳も、真っ赤。
 いい眺めだと隆司は一人ごちる。
 隆司は後ろから一磨を抱きこんでいた。腹部にまわしている腕を少し強く引っ張るだけで、その身体が自分の方に倒れてくるこの状況を楽しんでいた。
 はじめは隆司の腕の中から抜け出そうと謀っていた一磨だったが、逆に敏感な内腿を撫でられて反撃できなくなってしまった。
「たまには、いいだろう?」
 密着したまま、耳介に舌を寄せて低い声で言葉を吹き込めば、びくびくと震える。
 うつむいたまま、一磨は何度も首を横に振る。表情を窺う事はできないが伝わってくる体温と雰囲気で、恥ずかしがっている事はよく解る。
 腕に力を入れて更に近づける。
 一磨からちいさな声が漏れるのも心地よい。
 剥き出しになったうなじに口付ければ、肩が跳ね上がる。同時に相手の腹部にまわしていた手で、服を掻い潜り素肌を悪戯する。そこには昨晩、隆二が付けた情交時のうっ血が色濃く残っているはずである。自分のものであると、制限できず知らずきつく痕を付けていた。
「っや、あっ……うっ、ん」
「こら、噛むな」
 羞恥から声が漏れるのを嫌った一磨が自身の手の甲で口を塞ぐのを外す。
 無理やりかざすと、やはりくっきりと歯形が白い手に付いている。
 その間も休むことなく、隆司の右手は一磨の素肌を弄る。それを阻止しようとする一磨の腕も力が抜け、身体で挟み込むだけとなる。
「っも、だ、っあぁっ、なん……」
「ん?」
「……きの、ああぁ」
 下着を分け入って、昨夜の余韻かまだ腫れぼったい窄まりに辿りつく。そこを苛め抜いたのは、つい数時間前のことである。
「昨日、やったばっかりだって?」
 唇を噛み締めて、恨めしそうにそれでいて困ったような、涙を一杯に溜めた瞳が振り返る。
 彼はそれが逆効果になるとは未だに気付かない。
 抱かれなれているようで、慣れていない彼のその初々しさは全く変わりがない。
「あぁっ」
 くちゅりと濡れた音がする。
 処理はしてあったが、中は熱いままだった。すんなりと指を飲み込んでいくその場所にいとおしさと先を急ぎたい気持ちがせめぎ合う。
 流石に、まだ早い。
 ゆっくりと中を攪拌するのに合わせて、もどかしげに一磨の腰が捩れる。
「いっ、あっ!」
 言葉もなく息を乱して仰け反った一磨を受け止める、心地よさ。
 鼻孔をくすぐる匂い。
「……ぁ、りゅ……ン」
 くったりと力の抜けたその身体を、上から覆うようにして唇を貪る。
 生み出される睡液が溢れ、飲みきれずに一磨の口角より流れ落ちる。
 欲に煙った頬を撫で、涙を拭ってやる。
 それにも感じるのか、肌を粟立たせる姿に一時的に止めていた中に入ったままの指の動きを再開する。
「ひぁぁっ」
 一度頂に上り詰めたせいか、そこは更に爛れていた。この位置からは見ることはできないが、真っ赤に熟しているであろう。
 じっくり顔を見たい衝動に駆られ、相手の身体の向きを変える。開放に酔いしれているのか、さほど抵抗らしい抵抗もなくすんなりと向き合う体勢になる。
「ん……」
「一磨」
 低く囁いた声に、雫のついた長い睫毛がゆっくりと持ち上がる。
「っあ……」
 視線が絡まり、無意識に一磨が身を引く。
 強い眼から逃れるように、慌てて自分の視界を遮る。
 そのため、満足そうに口角を上げる隆司の表情を拝む事はできなかった。
「一磨」
「あぁっ、やぁ……あ、あぁ」
 隆司の猛りを受けて、一磨は快感に仰け反る。
 腰を支える手と、絡めて握られた指に安堵を覚え、体内で力強く主張する彼から灼熱を覚えこまされ、噎び泣く。
 ついでとばかりに、胸の尖りに舌が這わされる。どの快感を追えば良いかも解らず、力の入らない身体が跳ね上がった。
「いっあぁ、あっ、あ……も、やだぁっ」
 跳ねた勢いと、自身の体重で更に深く隆司を感じてしまい、限界だった。
 初めは探るようだった下からの突き上げも徐々に早くなった。しかし、彼に翻弄され続けられている一磨は思考が働かず、全身に刻まれる快感に身悶え我を忘れた。
 質量と速さを増した隆司と、熟れて爛れきった一磨。
 ひっきりなしに淫猥な水音を響かせ、荒い息を紡ぎだす二人の行き着くところは、絶頂。
「んむぅ……ふっ」
 喘いで、閉じるのを忘れた一磨の真紅の唇に吸い寄せられるようにして、口腔内が荒らされる。引き攣った舌を弄ばれ、甘噛みされる。
「んんーっ」
 それが最後の引き金となり、一磨は堪らず欲望を吐き出した。同時に、ぎゅううっと体内の隆司を締め付け、奥に放たれた灼熱を受け止める。
 淫蕩な雰囲気の室内で、二人の荒い息のみが響く。
 互いの体温を分け合う。
 しばらく、隆司の腕の中で放心状態だった一磨が身じろぐ。
「ばか、りゅうじ……」
 出しすぎて嗄れた声で詰る。ついでに、呂律も上手く回っていない、子供のように舌っ足らずである。
 意味が解らず、視線を合わそうとするも嫌がるように、更に引っ付かれてしまう。
 これはこれで、いいのだが。
「おれ、りゅうじみたいに、もう若くないんだよ? 離してっていったのに……」
「……まだ、二十代だろ」
「んーっ……えっ、も、むりぃっ、おね、がいっ!」
「これからだろう?」
 にっこりと笑んだ隆司と、中で新たに息づいたものに、一磨は焦った声を上げた。
 彼らの有意義な休日はまだ続く。