コンテスト応募作【深淵プディ】あとがき
このページまで開いてくださりありがとうございます。掲載サイトによってあとがきという形式になるのかブログという形になるのか分かりませんがここではあとがきの形式とブログ掲載の両方を取ることにします。
今作はBL投稿サイト「fujossy」開催コンテストで「オメガバース」「獣人」という普段なら一切見向きもしないカテゴリを用いることが条件でして、オメガバースが正直苦手どころか地雷というよりも核ミサイルレベルでしてどうしたものかと思ったのですが、案が浮かんでしまった以上書かねばならないと思いまして、参加することにしました。30000字以内ということだったのでどうするかな…と警戒して書いた結果、まさかの余裕で足りました。20000字と600字くらいなので。8000字って結構話進みますからね。なんなら短編1本出来てしまう文字数ですし、以前のコンテストは10000字以内というのが条件でしたし。
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自分は非常に面倒臭いこだわりと違和感さえ覚え始めている固定観念から基本的に自創作以外の18禁が苦手で、自分の18禁創作にすら苦手意識を抱いています。だからオメガバースを調べているときは正直嫌悪と拒否感に恐怖と不安感から吐気なども催しました。性描写がとにかく怖くて、それでも自創作だからなんとか…という感じでやっているし、むしろ怖いものみたさ、ある種の傷痕も流血もない自傷行為に等しく18禁創作を一種の精神安定として書いているわけですが、今回のつらいところはあえて自らオメガバースというカテゴリに首を突っ込んだところです。前述の不安感というのは受動的なものであったのに対し、今回はオメガバースをよく知らないため自ら調べにいかねばならないということでした。知っていることといえば男性妊娠ということで、そもそもわたくしの主義主張として「男性妊娠」に激しい恐怖と興味に似た強い嗜虐心が沸くからです。
「男性妊娠」という単語が出てきた際に身籠れど産めないな、わたくしが産ませないな、となんとなく思い、あとはメインCP2人に任せていたんですけど本当にこれ攻は産ませないなと思いました。
あとはわたくしの性癖です。「主人公たちの子供」というものを激しく嫌悪しているから。
☆名前の話
・ミルフィ→ミルフィーユ
・ティラン→ティラミス
☆タイトルの話
タイトルの第1案は「浅学的深淵に沈むのか」でした。は?って感じがあったので「深淵」だけ残したのですが、19世紀の哲学者フリードリヒ・ニーチェの格言に「怪物深淵を覗く時、深淵もまたあなたを覗いているのだ」というのがあるのですが、この一説から「感化された鏡」みたいなイメージを受けまして、それに転じて俗にいうと「ブーメラン」(自分が非難したりしたことが自分にも当て嵌まること)みたいなコンセプトでタイトルを付けたというか、今回は設定よりもタイトル先行でした。
プディングはもう材料を分けられないものとしてくっ付けました。見慣れたものでいうとカスタードプリンみたいなものです。熱中症の深刻さを伝える際に、「ゆでたまごを生卵には戻せない」というフレーズを聞いてそこから着想を得ました。
結局は社会的にも肉体的にも弱者の立場にいるものを糧に、実験している点ではミルフィも奴等と変わらないからな?という感じでブーメランってことですね。でも多分ミルフィはそれに気付いてないんじゃないかな。自分が犬を使う実験をティランに託したことも、腹にいる生命を堕ろすこと告げたことも。結局は暴力で決着しようとしたことも。
わたくしも歯痒く思うし多分わたくしがオメガバースの世界にいたとしたら肉体的にも小さく、頭も良くはなく、平々凡々というよりはラインが低いのでおそらくオメガだったんじゃないかと思うと反吐が出ますが、正直わたくしの主義主張でいうなら研究所にいた奴等側の言い分に近いので、今回のメインCPは少し自己欺瞞的な感情移入で書きました。
お前ら受虐げられてるの好きだろ!攻に守られてろとばっかりに!くそ!!!!!オメガが虐げられてレイプされて、レイプされてるのにあんあん感じて、それを責められて中出しされまくって身籠もらされて、誰の子供か分らないけど子供に罪はないっつって、出産のリスクもなく下痢するみたいにガキ産んで、それが幸せの定型みたいに暮らすことに萌えるんだろ!やってられるか!…という感が常に気持ちの中にある。ここを脱せないわけです。恐怖だわ。胸糞悪さが根付いてるんです。先述のとおり立場的にはオメガ寄りということで。結局のところ作中で明言されませんがアルファ牡のミルフィは強者の理論振り翳していて、登場人物全員ろくでなしという傾向の強いわたくしの創作の中でも特にどうしようもないキャラクターだったな、という感。
でも、この弱者が虐げられてる図像がたまんねぇ!萌え!もっと犯せ!快楽堕ちにしろ!この肉便器!っていうのはもうわたくしは責められず叩けないことですよ。これこそわたくしもブーメランになるから。いじめ問題まで話が発展しそうですが、いじめている側はいじめているつもりがなかったりしますし、これはもう人間の染み付いた悦楽だと思いますから。つまり研究所の奴等だってただオメガに相応しい扱い方をした程度に思っていて、それがもう刷り込まれているわけで興味や欲を止めるのはつまらないことだと言わんばかりに。アルファ牡のミルフィは見えている世界に満足して何も見つけられなかったいわば教師的な立ち位置にいるわけで。知ってさえいればどうにか対応出来たかもしれないし上手く立ち回れたかもしれない。かといって彼はただ強者というグループに本人は与り知らないままぶち込まれていただけで。…といって、差別主義者!いじめ肯定派!といわれても弁解のしようがなくなるのでやめるんですが。あくまで虚構のこととはいえ現実に投影してしまう。逆も然り。ホラー作品なんかは上手くそれを応用しているわけで。
現実では、教育がきちんとそれなりに行き届いてまだいじめやハラスメントはやまないけれど少しずつですが改善に向かっているのではないかと思っています。あくまで、思っています。作品はどうしてもキャラクターを都合よく動かし、役割の奴隷にさせねばなりませんので。
ただ、それがひとつ、恐怖としている理由です。わたくしが深淵に覗かれていたということです。
経験に基づくなり、やたらと観念が強かったりで感情に火が点いてるか点いてないかだと思います。それを恐怖と感じて苦手と感じられるのは素敵だとすら思うほど。わたくしは脱せませんよ。でも恐怖ですわ。深淵に覗き込まれていることにも気付かずに、まだ深淵を覗いている気になっているんです。
それではまだまだ未熟で隙だらけな作風ではありましたが偉そうに語り、若干の小っ恥ずかしさも残しながらも、ここまで読んでくださってありがとうございました。
※表紙没案
没理由:作風に合わないから