公爵様は純真な花嫁を溺愛する。ssです。

《赤薔薇の封蝋の手紙。》

 

 

『親愛なるセシルへ
やあ、元気にしているかい?
体の具合はどうかな?
きちんと休んでいるかい?
君は頑張り屋さんだと風の噂で聞くよ。
少し心配だ。処方している薬は必ず飲むんだよ?
今は辛いかもしれないが、きっと天国のお父さんとお母さんは君の事を見守っている。だからくじけずに生きていってほしい。
君が幸せになるのを祈っているよ。
 ヴィンセントより』

「親愛なるヴィンセント様
申し訳ありません。
僕にはもう貴方からいただいた薬代をお支払いする賃金はありません。
ですからもうお薬もいりません。
今までありがとうございました
 セシル・ハーキュリーズ」

『親愛なるセシルへ
薬代のことは気にしなくともいい。
もうお父上から十分にいただいているからね。
だから君が薬代のことで気に病む必要は無いんだよ。
それよりも、きちんと薬を飲みなさい。
しっかり養生して気を確かに持つんだよ。
お父上とお母上はきっと天国で君を見守っていてくれるから。
 ヴィンセントより。』


 ーーああ、ヴィンセント。
 貴方に会いたい。
 会ってありがとうと伝えたい。
 だけど僕の容姿はあまりにもおぞましい。
 赤い髪、赤い目をしたこれはまるで人の生き血を吸ったような色をしている。
 きっと貴方にも気持ち悪いと思われる。
 だったら会わない方がいい。

「ヴィンセント……」

 そしてセシルは一通の手紙を抱きしめ、目を閉じる。
 夢の中だけは幸福な出来事でありますようにと願ってーー。

 

 《赤薔薇の封蝋の手紙。*END》