思いつきオメガバース

 

こんにちは。ハラハラ展開の話ばかりを連続で書いている天白です。

 

「華としあわせの時間」ですが、いま公開している最新部分が、たぶん私が一番書きたかったところですね。読み手の方がハラハラしてくださっているかはわかりませんが(汗)

 

さて。

 

こういうシリアス?な話ばかり書いていると、すっごくくだらない話も頭に浮かびます。

すごくアホなの書きたい……

ポッと出たオメガバース設定の話があるので、ちょっとこちらで公開します。タイトルとか決めてません。

 

 ☆☆☆

 

 そのΩは不憫だった。

 生まれてからずっと、彼は座敷の奥に幽閉され生かされてきた。父も母も兄や姉、弟達も彼を蔑みいないものとしていた。彼もまた心を閉ざしていた。

 唯一、心を開いたのは彼の世話をする奉公人の男。彼は恋に落ちた。いつかは外に出してあげると、男は彼に約束した。

 しかし彼は男と結ばれなかった。持て余しているΩを買ってやると、とある貴族のαが彼の家族に提案したのだ。大金を得た家族は喜び、彼をαの下へ引き渡した。

 彼はαの慰み物になった。番だけは避けるよう首輪を嵌めたまま、長いこと長いこと彼はαに虐げられた。

 腹に子を宿すのは時間の問題だった。彼はαの子を産んだ。そして国は戦争を始めた。αは国の宝だと出征に駆り出されることはなかったが、その二年後にαもまた家を空けることを余儀なくされた。

 長い時を経て、戦争は終結した。国は獣人達が治める国の領土になった。当たり前だ。獣人は皆、αなのだから。最初から勝てる筈もなかった。

 Ωの彼は子と共に家を追い出され、遊郭に身を落とした。その後、発情期がくる度に子を宿し、子供の兄弟が増えていった。

 そして彼は末の子供が八つになる頃、客のαに見初められ身請けされていった。子供達は捨てられた。残されたのは母の身請けの金。生きていくのに困ることはなかったという。

 母の愛情を充分に受けることが出来なかった末の子供は悲しみのあまり母を恨んだ。しかし、幼くも生まれてから捨てられるまではしっかりと、愛情を注いでもらっていたのも確かだったのだ。

 お母さん、僕は貴方が嫌いで好きでしたよ。

 兄弟達は逞しく育ち、夫、そして妻を娶り、子を成していった。

 その間、彼のようなΩは生まれなかった。ああ、良かった。彼のような不幸なΩは生まれちゃいけない。もう二度と。

 もう二度と。

 

 ーーーー…

 

「うーわ……すっげぇ盛られてんな……俺」

 昨日、曾祖父ちゃんに聞かされた自分の母親Ωの話。俺はそれを聞いて、やっぱりΩは不幸な人生を歩んでいくのかと先が真っ暗になってしまった。

 俺の両親も、俺がバース性診断でΩと判明した当時は消沈していた。我が家は一気にお通夜状態。そこから三年間くらいは暗~い生活を送ってきたが、余命幾ばくもないと医者から診断された曾祖父ちゃんの家に親戚集め俺達一家も向かったところ、Ωの母を持つその曾祖父ちゃんからとくと彼の生涯を聞かされ、しくしく枕を濡らしながら曾祖父ちゃんの家で眠りについたのだ。

 ……が。

「ぜんっぶ、思い出したわ……」

 俺、田井中圭介は思い出した。曾祖父ちゃん……いや、陸郎! その母の話、どっから聞いたんだお前は!

 90%デタラメじゃねえか! 当時八つにしてもお前の中の母はどーなっとんじゃ!!

 腸が煮えくり返るのを抑えながら、俺は寝巻きの浴衣姿のままハッハッと短い呼吸を繰り返す陸郎の下へと向かった。

 スパーン! と開けた襖の音に、付き添っていた爺ちゃん、婆ちゃん、そして俺の母親が驚く中、俺は陸郎に向かって思い切り怒鳴った。

「陸郎! お前は母の何を見て育ってきた!! Ωが憐れだと!? 私が一言でもそんなことをお前に言ったか!?」

「えっ、け、圭ちゃん?」

「どうした、圭介!?」

「お父さんになんてことを!」

「圭介、やめなさいっ!」

 周りの大人達が孫及び息子の突然の奇行に驚き、どよどよとざわめき出した。廊下からは父親が走って俺を止めようとしたが、一喝した。

「だまらっしゃい!! 私は自分の息子に怒ってんだ!!」

 すると、今際の際にいた陸郎がカッと目を見開き俺を見た。

「はっ……け、圭す……いや、恵、母ちゃん……?」

 ズカズカと中に入り、陸郎の胸倉を掴みながら俺は唾を飛ばして怒号した。

「私は生まれてから死ぬまで自分を不幸だと思ったことなんざ一度もねーよ! αに買われてお前達を捨てたぁ!? んなことするか! 私は当時、子供ら相手に豆撒きの鬼を演じて外に出たら近所に不審者扱いされて逃げて転んで打ち所が悪くそのままおっ死んだだけだわ! どーだぁ!!」

 早口で捲し立てるなんとも情けない自身の死に方に、周りはポカーン。誰も俺を止める者はいなくなった。

 俺は年老いた我が子を抱き締めると、陸郎も皺くちゃな手を回し、俺達は熱い抱擁を交わした。

「母ちゃんっ……母ちゃん!」

「俺ほど子宝に恵まれたΩもいねーわ! どうせ死ぬなら母の愛を存分に受けて死ねー!」

「かあちゃーん!!」

 ガクッ! と、陸郎は俺の腕の中で眠りについた。永遠の眠りではなく、スヤァ……の方の。

 こんなに皺くちゃになって、まあ。御歳90だからな。よくここまで生きてくれたもんだよ。頑張った、頑張った。

 禿げた頭を撫でてやりながら、俺はフッと微笑んだ。しかし何やら感じるな。パッと顔を上げると、親族というギャラリーが俺を取り囲んでいた。あと主治医。

 あ、しまった。やり過ぎた。

「あ、あの……圭す……?」

「圭介、なのよ、ね?」

「お前は爺ちゃんのためにっ……! ううっ……!」

「構わん。息子の為だ」

 泣き出し始めた爺ちゃんに、俺は腕を組みつつ言い切った。そんな俺に、従兄弟が「ヒイッ」と後ずさる。陸郎に続く代表者を前にこんな態度を取ったもんだから、戦かない方が無理な話か。彼奴ら、俺がΩだとわかって馬鹿にしてやがったから、いい気味だ。

 言葉を発せない周りを代表し、婆ちゃんが手を上げながら俺に尋ねた。

「それで、貴方は? お義父さんの……?」

 そうだな。前世の記憶を思い出した俺だ。今の俺を周りが知っていても、名乗らないわけにはいかんだろう。

 俺は仁王立ちすると、田井中家の全員へ自己紹介を始めた。

「田井中圭介。16歳。Ω。それから現当主である田井中陸郎の母であり、今日まで田井中家で語り継がれてきただろう、かわいそ~なΩの恵です。改めてよろしく」

 

 

 

 ☆☆☆

 

 

 っていう……

 

 なんでこんな話、浮かんだんだろ…orz

 

 続くとしたら完全にコメディですね。