【えちぅど】イチゴとキウイのネトるタルト

500字程度(〜520字くらい)にしておきたかったのですが700字強。

* * *

 赤と緑は反対の色。リボンの色、樅-モミ-の木の色。友人の目の前にある、イチゴとキウイのタルトとか。黄色はいつでも仲裁者だ。鐘の色、信号機、彼に刺されて避けられる、パイナップルだとか。

 

 少しだけ、気に入らないのだ。似ているようで似ていない彼とアイツを思わせる。俺は皿の端に避けられて、タルトの上は彼とアイツの会場だ。

 

「ひでぇよな、アイツ」

 

 金色のフォークが俺を刺す。ひとつひとつ、パイナップルが弾かれる。イチゴとキウイの仲を引き裂く邪魔者。

「絶対、当て付けだ」

 

 積み上げられた俺の残骸から無邪気なフォークが引き抜かれていく。望みは薄い。

 

「他に好きなやつ居るなら、言えばいいのにさ」

 

 俺は俺を慰める。繊維を齧ると甘酸っぱさが広がる。俺が隣の彼に惚れたとて、味わうことのなかった甘さと酸味。

 

「あれ?お前ってキウイ嫌いなん?」

 

 俺はキウイを除いていく。嫌いではないけれど、大人げない。

 

「今は、気分じゃない」

「じゃあオレがもらっていい?」

 

 どうせ彼はアイツの味方をするのだろう。どうせ、またアイツのもとに帰るのだろう。

 

「いいぞ」

 

 彼は無邪気にアイツを拾っていく。皿の端に退けられた俺は、ただ遠くから見つめるだけ。

 

「じゃあパイナップル食べる?」

 

 彼の唇にキウイが触れる。俺も触れたい。少し並びの悪いかわいい歯に、俺も、噛まれたい。

 

「いいや、要らない……」

 

 食べるのが早い彼はもうクッキー生地を食べていた。そして、フォークが俺を刺す。俺の恋心があの白い歯に噛まれていく。

 

「なんで……」

「あ?やっぱ食いたかった?ごめんな。パイナポーは口直しだったの」

 

 また彼は俺を刺す。唇に乗って、歯に潰される。食べ方はそこそこ綺麗。姿勢の悪さもかわいく見える。

 

「浮気しないか、俺と」

 

 すぐ隣の手に手を重ねた。甘たるさの混じる固唾を呑む。彼の唇にパイナップルが消えていく。

 

* * *

 黄桃にするか迷ったしイチゴとキウイとパイナポーがメインのタルトってある?