【えちぅど】地上で縺れパスタ ※駄文少々
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愛撫、愛撫、愛撫。俺にはやらない細かい手付きで彼は自分で焼いたスポンジケーキに自分で混ぜたクリームを塗りたくる。俺にはしない力加減で、ゆっくり、優しく、細やかに。俺の髪を掻き乱して、引っ掻いて、噛むくせに。
浮き足立った鼻歌を聞きながら俺は皿を洗っていく。所々外れる音程も、他のやつなら不快なのに、こいつのものだと可愛く思うから惚れた者負け。不条理だ。すべて許せてしまうから。
「イチゴうま〜」
クリームを塗りたくりながら片方の手はいちごをひとつ拾っていく。もう3個目だ。
「飾るものがなくなるぞ」
皿の水を払い、パスタの茹で具合を確認する。ベーコンは厚切りにして、トウガラシは少々。ニンニクチップは多め。味も濃いめ。ソーセージを添えよう。惚れた者負け。味付けはあいつ好み。ニンニクは苦手、薄味が好き。俺とは反対。それでも美味しいと言ってくれるなら俺も美味しくなるのだろう。不条理だ。何色にしろ、こいつ次第でカメレオンみたいに俺の好みは移り変わる。
「スパゲッティーどう?」
「いい感じだ」
イチゴに伸びた手が止まる。クリームを満足に塗ったら、次は絞り袋でデコレーションをはじめる。
「あんま食ったら、お前の食えなくなっちゃうな」
そこにもホイップクリームを塗ったのかと思うほど白い歯を見せて笑う。それであいつとのキスはホイップクリームよりずっと甘い。不条理だ。俺ばっかりが物足りない。それでいて簡単に満たされる。
「お前のペペロンチーノ、大好きだもん、オレ」
口元、鼻の頭、俺のキスする場所にあいつは口実を残してくれる。どうしたらそうなる?こいつは俺を試していて、きっとこいつにそんなつもりはない。惚れた者負け。惜敗なんてものではなくて、俺の完負け。複雑に絡んでいたはずの俺の恋心は簡単に巻かれて、こいつの可愛い口でなかったことにされるんだ。
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700字強。
トウガラシのところを「鷹の爪」にしたかったのですが、トウガラシの品種らしくて、品種というと「とち◯とめ」とか「あき◯こまち」みたいな品種だった場合なんか創作でいうところの著作権、商品でいうところの商標登録みたいな感じでマジィかな?って思ってトウガラシなんですけど、頭の中に浮かんだワードは「鷹の爪」。
タイトル、「傷痕ぺろぺろペペロンチーノ」にしようかと思ったのですが、それはまた別の話にするか。
これは運もあるのですが、家族や家族だけでなく周りの人々の功績()でもあるので自慢できることだから言ってしまうと、苦労したことがなく、自分が勝手にこだわりという魔界を作ってそこに棲んでしまってギャオオンしているだけなので、普遍的なものでいえば「食い物いっぱい食える=幸せ」という短絡的な方程式しか持っていないまであるな。という点で食い物の名前ばっかり出てきたりタイトルになりがち。(何が言いたいかと言うと苦労したことないから幸せというものの認識が浅いかも分からんということ)
「ぼ◯のなつやすみ」ってゲームで、文章でここまで美味しそうに家庭的な料理を表せるのか〜って思ってから、わたくしも創作内に料理いっぱい出したくなった。冗長、無駄、むしろ何か意味あるのでゎ!?!?ということになっても……