クリスマス2020
メリークリスマス!
みかえもメンバーのクリスマスパーティーSSです。
《クリスマス2020》
~1年前 冬~
「な、んで、こんなことに……」
そう、茫然と呟いたアレクの目の前には飛び散った赤い液体と机を囲むように倒れこんでいる後輩達、そうしてその中央で普段滅多に見せることのない満面の笑みを浮かべた数年来の友人がこちらを手招きしている姿が映し出されていた。
◇◆◇
遡る事数週間前
「クリスマスパーティ~?」
「そー!やろうよーめーちゃん!」
そう、鈴が芽季に話しかけていれば詩音が近寄ってきて会話に加わった。
「何々、めいめいとりんりんクリスマスパーティーするの?」
「うん、はづくんも一緒にしよーあおちゃんも誘ってさー!」
「べっ、つに藤堂誘わなくても良くない?」
「もーそんな事言わないで皆で楽しくワイワイやろうよー」
「ま、まぁりんりんがそう言うならぁ」
そう、詩音が渋々頷けば2人の後ろから大きな影がにゅっと現れた。
「楽しそうな企画だネ、良ければボクも混ぜてほしいナ☆」
「アレクさん!ぜひぜひ参加してくださーい」
「大人数の方が楽しいですしねー」
「ワーイ、宮くん達優しいネ!」
「やっぱりクリスマスパーティーと言えばプレゼント交換とかかな~」
「ケーキは俺のバイト先の持ってくよ」
「はづくん所のお菓子美味しいから大好きー!」
「へーそれは是非とも食べてみたいネ☆」
そう、ワイワイと盛り上がる3人に対して
「俺、良いなんて一言も言ってないんやけどな……」
と、呟いた芽季の言葉は誰に拾われることもなく消えていった。
◇◆◇
「さっくん、この惨劇はキミがやったのかい?」
アレクのその問いにきょとんとした顔で
「惨劇って大袈裟やなー皆が弱いだけやわ」
と、言い放った芽季に思わずアレクの口元が引くつく。
「乗り気じゃなかったとしてもこんなことするだなんて見損なったゾ、さっくん!」
「いや、俺はさっきからアレクさんが言っていること一個も理解できてないんやけど……」
そんな会話を2人が繰り広げていれば、先程まで動くことのなかった屍……もとい鈴の身体が小さく身じろいだのでアレクは勢いよく駆け付けその体を仰向けに起こす。
「宮くん!?」
「み、みず……」
アレクの呼びかけに短く答えた鈴の要求に応えるべく机の上にあったコップへと水を注げば勢いよくその水を飲みほしていく。
そうして同じように倒れていた面々も水を求めて起き上がる。
その姿はさながらゾンビ映画のワンシーンのようで「ワァオ☆」だなんてこの場に似つかわしくない言葉を発したアレクの脳内には沢山の疑問符が溢れていた。
そして、現状でまともに話せるであろうたった一人の人物へ視線を向け説明を求める。
「それで一体何がどうしてこんな事になっているんだい?そもそもその机の上でぐつぐつと煮えたぎっている真っ赤な汁は一体なんなんだい」
「チゲ鍋やで」
「いや、嘘は良くないよさっくん、明らかチゲ鍋って色じゃないよねそれ、マグマだよね、それに刺激臭がすごいしこころなしか目も痛いよ」
「嘘ちゃうって、激辛チゲ鍋やねん」
そう言って掬ったお玉の中には恐らく具材だったのであろう何かが乗っていた。
「いや、何でそんなものをクリスマスパーティーで用意しちゃうかなぁ!?」
「え、だってクリスマスパーティーと言えば辛いモン尽くしやろ」
「え」
「クリスマスパーティー、別名激辛パーティーやろ」
「えぇ?」
「サンタさんの真っ赤な衣装は辛い物好きが高じてまっかっかな衣装を身に纏ってるんやろ?」
「……うん、色々ツッコミたい所満載だけど、大分違うネ☆」
アレクは思考を放棄した。
「忘れてた、めーちゃん家での去年の出来事を……」
アレクから水を受け取り何とか生き返った鈴は遠い目をして1年前、高校3年生の冬、咲良家のクリスマスパーティーに招かれた時の記憶を思い出しながら遠い目をする。
「いや、何でそんな大事な事忘れてたの、りんりん……」
同じく復活を果たした詩音が力なく呟けば未だ遠い目をしている鈴の代わりに碧葉が
「あまりにも強烈な出来事で記憶がぶっ飛んでたんじゃないの」
と、呟いた。
「おー皆復活したんかー!ほなアレクさんも合流したことやしパーティー再開しよか~」
だなんて呑気に言い放った芽季の言葉に「するかーーーーー!」と言う、3人分の大声が響き渡った。