【えちぅど】グラスブーケを、
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手を握る。同じベッドの中で、体温は彼のほうが少し高い。猫を抱いているみたいな日々は終わった。俺の指から彼の熱いくらいの手が擦り抜けていく。彼は野良猫になって、丸くなってしまう。こういう風に同じ方向を見るのは嫌だった。人生の設計図なら嬉しいことだったけれど。
ベッドを選びにいった日のことを悔やむ。ダブルベッドになんかしなければよかった。
他に好きな人がいるのだという。俺たちを縛り付けるものは何もない。約束だけだ。それも個人間のもので、保証人もいなければ紙一枚もない。俺か彼の意思で簡単に無いことにできる。もし彼があの日の一切を取り消したいのなら、俺は頷くしかない。まだ若いから。俺より4つも下で、根暗で口下手な俺と違って、陽気で人懐こく友達が多い。俺ひとりのわがままで、俺ひとりの満足で振り回したらいけない。俺は4つも上なんだから。残念だけれど。悲しいことだけれど。
会話がないわけではない。俺のほうが早く起きるから、目覚まし時計に巻き込むことをすまなく思って、毎朝謝り、彼は眠気の中で許してくれる。いつの間にか朝食も別々になって、なかなか顔も合わせなくなってきた。目を見てもくれない。完全に冷め切ったのだと思う。俺たちはもう元に戻れない。
彼は他に好きな人ができて、俺のことは…
失恋につけ込むような恋愛なんてするんじゃなかった。
帰り道に普段は気にもしなかった花屋が目に入った。小さな花束を持ったテディベアに、箱に入った薔薇や、鉢植えの中のオレンジの花とか、コップに入った虹色のものは作り物かも知れない。それからワイングラスに入った小さなひまわり。
彼のことを思い出した。退屈そうに本を読んでいる姿を一目見て、すぐ好きになった。
彼は若い。俺もまだ、世間ではずっと若いほうだけれど、こんな想いは一度でいい。何より他に好きな人なんていなくて、これから現れなかったら、なんて少し不安なくらいだ。
店へ入った。
別れて欲しいという彼に、今日こそしっかり話し合って、頷こう。だから、キズヲナメアウ相手が欲しかった。この決心が揺るがないように。
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800字後半
穏和系年上スパダリ超絶美青年攻め想定なんですがちょっと受さん(猫寄り奔放ワンコ系)にイラっとクるやつ。