【えちぅど】らびゅらびゅチッスは歯磨き後
※なんか汚げ
※朝チュン系表現
* * *
休みの日は隣で並んで歯を磨く。ミントのあの清涼感が、俺のかわいい恋人は苦手らしい。曰く、
「だってずっと口の中スースーするから、うがいやめらんないじゃん」
―ということらしい。だから歯磨き粉は子供用のイチゴ味だのメロン味だので、白で揃えた棚が少しファンシーなことになっている。これで本当に磨いた気になるのだろうか。
「磨いたぞ」
「うん、見てた」
歯を磨き終わり、顔を洗う。彼はまだ念入りに歯を磨いている。口を濯-ゆす-ぐのを待ち、彼は顔を洗った。髪まで濡らして、洗面台に水滴を撒き散らす。水遊びの後の犬みたいだ。
「お前も磨き終わったな」
「うん」
「キスしていいか」
「う、うん………うん?だ、ダメ!」
俺はここ数日、キスをさせてもらえない。
「虫歯うつるじゃん!」
俺は彼と今まで何度もキスをしているが虫歯がうつった試しはない。またアイツに変なことを吹き込まれたのだ。それこそキスよりすごいことの最中-さなか-にも交わしているのに、こういう時は、やはりキスをさせてもらえない。
「子供じゃないんだ、うつらない」
「ダメ!!」
虫歯がうつるような歳じゃない。何度言っても聞いちゃくれない。俺の言葉よりもアイツの言葉のほうが強いのだ。いつものことだが少し仲が良すぎな気もする。彼が楽しいなら、口を出したりはできないけれど心配にはなるし、何より現状、俺はキスをさせてもらえない。
「俺とキスするの、イヤなのか……?」
犬みたいな性格のくせに猫みたいな目を捕まえて、首を傾ける。視線は放さない。彼と付き合って、アイツを警戒して、俺も少しはあざとくなった。少し照れるが背に腹は変えられない。それに、たまには俺が困らせてみたくもなる。
「い、いやじゃ、ない…けど…」
「じゃあ、するぞ」
俺も少し緊張してきた。初めてではないのに。そういえばファーストキスはレモン味らしい。これも彼がアイツから仕入れてきた。けれどこれも嘘。彼との初めてのキスはチョコレートの味だった。
「ま、ま、待って!もしお前に虫歯うつったら、歯医者さんに付き合ってるのバレちゃう?」
彼に妙なことを吹き込むのは楽しいだろうな。
* * *
900字ちょっと
チュウしたらチぬ部屋にぶち込まれたらいいと思う。