乙女なのかジェントルマンなのか
唐突ですが、濡れ場……メイクラヴ場面での描写や表現に悩む作家さんは少なくないですよね。
少なくないどころか、小説を書いてらっしゃるほとんどの創作者さんが悩んでいるのではなかろうか。
若手から淑女まで満遍なく。
わたくしもその一人です。毎回、頭を抱えます。唸ります。辺りを転げ回ります。
書き上げたときの消耗も激しいです。そして、発表する前は手が震えます。
くだらない前置きはいらんわ。直裁に申し上げます。
なんやかやの表現に困りませんか。
あれです。男性器の。
自分以外の方のお作を読んで回っておりますと、どなたも工夫されていて感心してしまうことがあります。
わたくしはかなりいい年ですが、露骨な描写が恥ずかしくてできません。
読者さんによりますと、濡れ場どころか全体的に「かなり濃厚」らしいのですが、具体的な描写はほとんどしていません(できません)。
ペ●●だとか男●だとかならまだいいです。口には出せませんが、文字なら何とか可能です。
でも肉●だとか●●だとか●●●だとかは完全に無理です。
伏字ばっかりで何だかわからんわアホとお怒りの方もいらっしゃるでしょうけれどお許しください。
捉え方によっては、わたくしの表現はもっと卑猥に感じるかもしれませんが、わたくしとしましては最大限の努力をした結果でございます。
読者さんに「ジュリアンは果たして本当に男性なのか」と問われたことがあります。
しばし考えて、「お好きに設定(妄想)していただいてかまいません」とお答えしました。
男性でも女性でも両性でも無性でもいい、好きに想像しながらお読みくださいと。
作者は(いちおう)男性と思っております。
部分的に姫だったり乙女だったりしますが、立派なジェントルマンでもあります。
すべての登場人物中で最も男前だとも思っています。
濡れ場で具体的な描写をいっさいしていないので、「本当に男性????」と疑問に感じるのはしかたないかもしれません。
その辺りを省略したのは、もちろん恥ずかしいのが一番の理由ではありますが、えがきたいのがそこじゃなかったということもあります。
特に“男”であることを強調する必要性を感じなかったから。
絶対に、何があっても“男”じゃなきゃいやだ、でなきゃ意味がないと仰る腐った嗜好の乙女たちは多いでしょう。
場合によってはわたくしもそうです。
でもこの作品では何か違うなって。どうでもいいとまでは申しませんが、強調する必要がなかった。
強調とは違う、お前の場合は省略とかごまかしだろうといったご意見がありそうですが、まあそうかもしれませんね。
いいんです。
わたくしが表現したいのは恋の切なさや悦び、痛みなので、いいんです。
快楽の前に愛、何がなくとも愛、あれも愛これも愛。
完全に恋する乙女の視線でアルフを見つめるジュリアンを今後も応援してやってください。