目が覚めたら、首輪がついてあった件について ※カットした山本さんの活躍話 前編

こんにちは、狛兔 卯 でございます。

 

昨日、完結しました、「目が覚めたら、首輪がついてあった件について」。

その最終話近くに突如登場しました、ダイナミクス性のパートナーを紹介する相談所職員の山本さん。

その山本さん活躍回を残念ながら本編では全てカットいたしました。

まあ、読んで頂けると、あとがきに書きました通り、「確かに、蛇足だな」と感じて頂けると思います(笑)。

 

fujossy様で活動させて頂いて二年弱。

その間、アトリエブログの使い方がいまいち分からず、今も放置状態でありますが、これからはこんな形で利用していけたらなって考えております。

 

長いので、二回に分けました。

 

話は、星斗が相談所を訪れて、ダイナミクス性のパーティーイベントに参加しているところからとなります。

 

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星斗は、山本に勧められるまま、ダイナミクス性別者の為のパーティーイベントに参加することにした。


そして、飼い主を求めて、未だ彷徨う星斗は毎週末、パーティーイベントに参加し、早くも今日で六回目の参加となった。

 

眞門と別れてから、ちょうど、一か月半が過ぎたころになる。

 

ダイナミクス性別者の為のパーティーイベントの催しは、プライバシー保護が念頭に置かれている為に秘密裏に行われる場合がほとんどだ。

 

会場となる場所は、市区町村が運営、又は関連する施設で行われている。


しかし、パーティーイベント当日の開催場所には、目印となるような派手な立て看板などは一切設置されないため、会場でどんな催しが行われているのかは、関係者以外には何も分からないように配慮されている。
これもまたプライバシー保護が最優先されてのことだ。

 

参加を希望した者には、参加者自身が指定したスマートフォンに、身分証明となる二次元バーコード、催しの会場、日付、時間、参加ルールなどが前もって届けられる。


その際、Domの参加者はDom参加者用の控室へ、Subの参加者はSub参加者用の控室へまずは訪ね、そこで受付を済ますように案内される。


ここでもまたプライバシー保護が徹底されている。

 

自身の性別に合った控室に向かうと、そこに受付要員のスタッフが従事しており、そのスタッフにスマートフォンに送信された二次元バーコードを提示して、己の身分を証明すると、控室に通され、パーティーイベントが始まる時間まで、その控室で待機することになる。

 

パーティーイベントが始まるまでは、DomとSubの顔合わせは一切できないルールとなっており、当然、終了後も一度、それぞれの控室に戻ってから、DomとSubの参加者がそれぞれ別の時間帯で会場を後にすることも徹底されている。

 

ここまで徹底するのは、プライバシー保護もあるだろうが、まずはSubの安全を最優先してのことだろう。

 

パーティーイベント中にも、プライバシー保護を目的としたルールがいくつか定められており、その代表的な一つが、参加者の名前は原則、明かしてはいけいないというルールだ。

 

なので、控室に入室が認められた者から先着順で番号が割り振られ、控室に入った瞬間から、パーティーイベントが終わるまでは、参加者はその番号で呼ばれることになる。

 

今日、星斗がパーティーイベントに参加する為にやってきた会場は、自身が住む市が運営する文化振興センター内にある多目的に使用されるイベント会場だ。

 

ちなみに、イベントが開かれる場所も毎週末変更される。
そこにも、ダイナミクス性の性別を守る為のプライバシー保護が優先されているのだろう。

 

星斗が慣れた様子で、Subの参加者用の控室にやってくると、控室の前には、イベントのスタッフである事の身分証明書を首からぶら下げた山本が待ち構えていた。

 

星斗は山本の顔を見るとハァーと重いため息をついた。

 

しかし、山本は「こんにちは~♪」と、スタッフらしく愛想のある笑顔で出迎える。

 

「また、ですか?」
星斗はうんざりだ、そんな顔つきを見せる。

 

「ええ、またですよ」
山本も先程の営業スマイルはどこへやら。

ムッとした顔つきをあからさまに見せる。

 

山本がムッとした顔つきを露骨に表したのは、星斗が懲りずに、毎週末のパーティーイベントに参加してくるので、見張り役の自分もそれに付き合わなければならないことに、うんざりしているからだ。

 

お前が毎週末、真面目に参加してくるから、俺も休み返上で参加してんだろうがっ!!

 

山本は胸の内で、そうぼやく。

 

星斗はムスっとした顔で、スマートフォンに送られてきた二次元バーコードを山本に提示した。

 

山本は専用のスキャナーで二次元バーコードを読み取ると、「はい、控室へどうぞ」と、星斗に告げ、「今日もお早い到着ですね。【S-02】でお願いします」と、どこが棘があるように強調し、【S-02】と書かれた名札となるバッジを星斗に手渡した。

 

星斗はそれを山本の前で自分の左胸につけると、「今日はこそは飼い主を見つけるんで。邪魔しないでくださいね」と、告げた。

 

すると、山本は、「ええ、ルールさえきちんと守ってもらえればね!」と、明らかに圧をかけるように返答した。