パーティーなら、ダンスシーンってやっぱり欲しいですよねっ、ねっ(・∀・)ノシ←同意して欲しい奴。

 

 というわけで、 【薔薇は冷酷な伯爵に溺れる。】より、文字数の関係上、書けなかったダンスシーンをこちらで失礼しますん~(・ω・)。

 えっと、挿入ページにあたるのは、「第五章†①意外な結末」の文末のところです。

 

 

 †

 

 

 

 この会場のどこかにクリフォードが居る。


 それなのに、こう壁際だと捜すのにも一苦労だ。

 早く見つけなければ第五の死人が出る。

 苛立ちを隠せないカルヴィンは、ただただ着慣れないドレスの裾を握り締めていた。

 

 すると、ひとりの男性がカルヴィンの前にやって来た。


 男性を見た瞬間、カルヴィンは自分の目を疑った。

 なにせ彼はそれこそカルヴィンが捜していた男性――漆黒の髪に満月の瞳をしたクリフォード・ウォルター本人だったのだ。


「ぼくと踊ってはいただけませんか?」

 その彼は、今自分の目の前にいるドレスを着た女性がまさか扮装しているカルヴィンだとは思ってもいないのか。跪き、手を差し出している。

 彼は本当にカルヴィンを組み敷いた男性だろうか。目の前にいる彼はとても礼儀正しい。それだけではない。微笑を浮かべているではないか。


「わ、わたくしは。実はあまりダンスが得意ではなくて……」

「実はぼくもなんです」

 動揺を隠しながら答えるカルヴィンに、彼はもう一度にっこりと微笑んで見せた。

 

 

 その微笑みは美しく、同性のカルヴィンさえも見惚れてしまうほどだった。

 彼はこうやって姉や他の女性をたぶらかし、殺したのかもしれない。

 とりあえず今、彼が自分の目の前にいるのなら殺人は起こるまい。

 このまま見逃さずにいれば白骨化の証拠も掴める筈だ。


 カルヴィンは警戒しながらも、彼の大きな手のひらに自らの手を乗せた。

 クリフォードは躊躇いもなく、カルヴィンを会場の中央に誘うと、他の貴族たちと同様にダンスを踊り始める。

 


 頭上に飾られた豪華なシャンデリアが周囲を煌びやかな世界へと誘う。

 シャンデリアから放たれる光の粒子は会場全体を覆い、眩いほどの光を放つ。

 彼の手がカルヴィンの腰に添えられる。

 たったそれだけのことなのに、カルヴィンの躰が反応し、熱を持ちはじめる。


 夜毎彼に抱かれる躰はこれほどまでに従順になってしまったのか。

 そう思うと、しれっと自分と向き合うこの男が憎々しい。

 睨もうと顔を上げれば、しかしカルヴィンは息を飲んだ。

 

 クリフォードが、まるで慈しむかのように自分を見下ろしていたからだ。

 満月のような瞳は穏やかで柔らかく、口元は弧を描き、こちらを見ている。


 なぜ、彼はそのような目で自分を見ているのだろう。

 そして自分はなぜ、彼の視線を逸らすことなく見つめてしまうのだろう。


 カルヴィンが目を奪われている間にも、ダンスは始まっている。


 彼のステップは完璧だった。

 これまで一度もダンスを踊った経験がないカルヴィンを巧みに誘導していた。

 

 

 クリフォードがカルヴィンを力強い腕で支えながら、足下は円を描く。カルヴィンは彼に寄り添うのが当たり前のように躰を寄せ、従順に動く。


 シャンデリアから放たれる粒子はまるでダイヤモンドだ。乳白色の光のつぶてが視界のすべてに降り注ぐ。幻想的な音楽も、ダンスも、すべてがカルヴィンを夢見心地にさせた。

 

「君は美しい。翡翠の瞳に吸い込まれそうだ」

 彼の甘い吐息が耳孔をくすぐる。

 耳障りがよい低音は、下肢に熱をもたらす。


 相手は姉たち四人の女性をを殺した殺人犯だ。それなのに、こんなにも身を委ねてしまうのはなぜだろう。

 今の自分は初恋を知った少女のようだと、カルヴィンは思った。

 姉への罪悪感がカルヴィンを襲う。

 俯けば、そっと顎を掬い取られた。

 薄い唇がずっと目の前まで迫っている。


 逃げなければ――そう思うのに、まるで金縛りに遭ったかのように動けない。

 カルヴィンは紅を引いた唇を開き、目の前にいる美しい男性を待つ。

 やがて円舞曲が終わる。

 演奏の代わりにあるのは人々のざわめきばかりだ。誰も彼もがこちらを見つめていた。ある者はため息を零し、ある者は陰口をたたいているのだろう扇で口元を覆い、話している。

 カルヴィンは人々に注目されていることに気が付くと我に返った。

 まるで火傷でもするかのように、クリフォードから身体を離し、慌てて身を引いた。


 ああ、自分はなんと愚かなのだろう。

 彼は殺人犯で、自分の身体を無理矢理奪った傲慢でもっとも卑しい存在だ。

 それなのに……なぜ自分は彼に身を委ねてしまったのか。

 答えは簡単だ。クリフォードの容姿はそれほどまでに完璧だった。


 とにかく、自分は頭を冷やすべきだ。

 のぼせ上がっている頭を落ち着かせるべく、カルヴィンは会場を抜け、庭へと降り立つ。


 すると庭のそこにはふたつの影があった。

 

 

 †

 

 っていうシーンですた♡(。→ˇ艸←) 。

 お楽しみいただければ幸いです。では、次はその後の二人でもまた書きますので御時間がよろしければお付き合いくださいませ(*^-^*)。