更新とミニ掌編「愛してる」の回(探偵×刑事)

「探偵と刑事」に「灯り」をあげました。

ベルジュラックとラクロワの会話、そしてハイドの宣戦布告、のお話です。

よかったら、どうぞ。

話がちょっとずつ動いていくと思います。

 

それとは別に、ハイド×ウィルクスのミニ掌編です。↓

愛してるという二人。

 

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「愛してる」
 突然パートナーがそう言って、エドワード・ウィルクスは驚いて顔をあげる。十三歳年上の夫、シドニー・C・ハイドは彼から少し離れた居間の椅子に座り、手作り感満載の薄っぺらな冊子を両手に持って、それを顔の前に掲げていた。老眼鏡をかけ、眉間に皺を寄せている。また繰り返した。
「愛してる。あ……愛してる? 愛してる」
「……なにをしてるんですか?」
 ハイドは台本を顔の前から下ろすと、重々しく言った。
「知り合いの神父さんに頼まれたんだ。クリスマスに教会でする寸劇に出てくれないかって」
「聖書にそんなシーンありましたっけ?」
「今年はモダンな寓話劇をするんだって」
 ハイドはよくわかっていない顔でそう言った。
「でも、台本をただ読んで練習するのは難しいな。……そうだ、きみが練習相手になってくれないか?」
 ウィルクスは困惑して「え?」という顔になったが、ハイドはさっさとソファに座っているウィルクスのそばにやってきた。それからおもむろに言った。
「愛してる」
 ウィルクスは眉を吊り上げた。かすかに赤くなったが、ハイドはそのことには触れない。ウィルクスの目を怖いくらい真剣に見つめて言った。
「愛してるよ、エド」
 やや強面のウィルクスの顔が赤くなる。凛々しい相貌の威圧感が増した。
「愛してる。愛してる。すごく愛してる」
「や、やめてください!」
「きみは反応がわかりやすくて可愛いな。愛してる。愛してる。愛してる」
「おれをおもちゃにしないでくださいっ」
「愛してるって言われたら、どうするんだったかな。教えただろう?」
 ウィルクスは沈黙して、視線をふいと逸らした。そして目を逸らしたまま、「おれも愛してます」とつぶやいた。
 ハイドはにっこり笑う。いい子だねと言うと、ウィルクスは抑えきれない思慕のあまり、尻尾をぱたぱたと左右に振った。
 二人の今日は暮れゆく。

 

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ときどき、糖度高いお話も書きたくなります。

ウィルクス君は、ハイドさんに深々と静かに着々と調教されていることに、気がついていないのです。