更新とミニ掌編、痴漢を捕まえた刑事の話。(探偵×刑事)
探偵と刑事シリーズ、「凶行」をあげました。
バルドー事件の話をする探偵と記者。
その後、探偵の身にある事件が襲いかかる。
よかったらどうぞ。
お読みいただけたらうれしいです。
※現在(11/24)非公開になっています。またのちほど公開設定に戻します。
※※公開設定に戻しました。(11/24 20:09)
一部、内容が変わっています。
そしておまけのミニ掌編。
本編とは関係ありません。
今日の探偵×痴漢を捕まえた刑事。
◯◯◯◯◯
「聞いたよ、エド」
仕事から帰宅したウィルクスに向かって、夫で私立探偵のハイドが言った。
「通勤のときに痴漢を捕まえたんだって?」
「ええ」ウィルクスはネクタイを緩めながらうなずいた。
「警官のサガなんですかね、なんとなくわかるんですよ。これまでも、通勤電車の中で何度か捕まえてます。今朝もそうでした。でも、あの男は不運でしたね」
刑事はハイドの座る仕事机の前に歩み寄りながら笑った。
「まさか警官のおれに痴漢するなんて」
「え!?」
ハイドは目を丸くして、思わず椅子から立ちあがった。ウィルクスはにこにこしていた。
「おれに痴漢してきた男、驚いてましたよ。学生かと思った、って。アラサーなんですけどね。童顔ではないはずなんだけど」
「え、そこ気にしてるのか!?」
ハイドは目を丸くしたままウィルクスの両手を握ったが、その彫りの深い、狼のような顔が急に深刻に歪んだ。
「気をつけるんだよ、エド。きみはとても魅力的だからね」
ウィルクスは照れたように笑う。そんなことないですよと言うと、ハイドは首を振った。
「いや、きみの魅力に気がつかないほど世間が薄ぼんやりだとは思えないな。そんなのどうかしてるよ!」
ウィルクスはぽかんとして、赤くなった。ハイドはそれに気がついていないかのように、パートナーの両手をぎゅっと握って、さらに深刻な顔で続ける。
「それに、報復っていうのはあるから……。エロなビデオとか小説では、報復されて快楽堕ちさせられるパターンだよ!」
「なんですかその想像……エロビデオ観すぎですよ」
「でも、そういう怖いことは現実にもあるから。そうなる前に、ぼくがそいつらを始末する」
ウィルクスは目をぱちぱちさせてハイドを見つめた。なにか起こる前に始末したら、報復ではなくただの殺人ですよ。いや、報復殺人も殺人だけど。
ウィルクスはそう思った。しかし、残酷さも殺意も隠さないハイドの気持ちがうれしかった。決して起こることがないように、自ら手を汚す心に心が震えた。そんなことを思うなんて、いけないのだろうか。おれはおかしいのだろうか。そう思いながらも、刑事はパートナーを抱きしめた。
厚みのある大きな手を痩せたウィルクスの腰にまわして、ハイドは言った。
「痴漢プレイもしてみたいね」
「……逮捕しますよ」
きみになら、と真顔で言うハイドの頬をつねって、できることならおれが、とウィルクスはつぶやいた。