ツーリスト II 朝焼けと、明日と
朝焼けと、明日と
デンパサール空港の真夜中の便
疲れた様子でソファにもたれかかる彼
搭乗アナウンスが入り出発の時間がきた
機内は平日のせいか
来た時よりも空いている
彼はシートに着くとすぐに目を閉じた
俺もつられて目を閉じるとすぐに眠りが訪れた
目を覚ますと
静かな機内
彼が外を見ている
暗い世界に段々と茜色の空が拡がってくる
黒々とした飛行機の翼でこの空間を滑空していることを知る
横顔のこめかみにそっとキスをすると
帰りたくない
と
苦しそうにつぶやいた
明日のことは
明日
考えよう
俺はそう囁き
彼の左手をしっかりと胸に抱きしめた
ツーリスト II end