圧巻の描写、無限の広がりを垣間見る物語
尊敬してやまないまえにしさんのハイファンタジーです! 色々な感情がせめぎあって気がつけば「尊い」の評価ボタンを連打していました。もう気持ちの上では100回くらい押しています。 私が注目したところは次の三つです! ★コンパクトな長さでも、重厚な長編を思わせる圧巻の描写 ★攻めと受けの絶妙なバランスの距離感と関係性 ★無限の広がりを持つ設定 カランコエ(受け)とキャタ(攻め)は主人と従者の関係です。敬語ではない話し言葉だけれど目には写らなくても厳に線引きが行われているとおり、彼らの関係は対等ではありません。でも、乳母兄弟であり、ひとかたならぬ感情をお互いに抱き、体を重ねる間柄なのです……もうこの時点で情緒が忙しくて期待が高まっていきます。 キャタがカランコエに向ける思いは、周囲の人間のおざなりな理解を問題にしないほど一途で盲目的なんです。 キャタの思いの強さを理解すればするほど、裏にあるキャタという人間が透けて見えます。 このままでいいわけないけど今はこうするしかない、主人に尽くすことしかできない彼の苦しみと喜びが伝わってくるんですよね。 ここだけでも凄まじいほどの完成度なんですけどさらに、設定の奥深さも注目してもらいたいです。 長編を見据えられるくらいの設定でありながらもコンパクトに、なおかつ攻めと受けの関係性もしっかり描きながらの描写。見事と言うほかありません。完全栄養でなおかつ大変美味しいお話なのです!! まえにしさんのお話は、「(登場人物たちにとっての)最悪」と「最高」が同じだけ天秤に乗せられてゆらゆら揺れているような、危ういけれどこれ以上ない奇跡的なバランスを保っているのですよね。このお話でもその絶妙さを大いに感じました。 キャタがカランコエに抱く山盛りの尊い感情と、カランコエに負わせなければならない苦痛。 カランコエがその身に受けた呪いと祝福。 対等ではないのに最も近しいお互いの存在。 どちらかの均衡が崩れた途端、きっとそれは大きな流れとなり、壮大な物語となるような予感がします。 書いてて涙が出てきました。 Twitterで「まえにしさんのハイファンタジーが読みたい」と厚かましい呟きをしていたら、本当に書いてくださって、嬉しすぎてビショビショに泣いています。 ありがとうございます!!