ことほぎの噺のレビュー
性行為のシーンはファンタジーだと思いました。
性行為自体に探求心がない方なのかもしれませんが
ありきたりな行為内容や、ありきたりな快楽の表現で、
すでに現在では形骸化している記号を並べたに過ぎませんでした。
互いのぶつかるような気持ちや、思いが高まって至る快楽が一切伝わってきません。
やっと行為にいたるという大切なシーンで、切なくなったり、きゅんとしたかったです。
まるで実体験を書かれたのでは?と思うような生々しさがないと、二次創作と違ってキャラへの関心が薄くなりがちな一時創作では、張りぼてに感じてしまいます。
胸が張り裂けるような大恋愛、もしくは注ぎ尽くせない程の愛情を注いだ経験がある方は、この恋愛感情の表現が非常に巧みで、読者は今まさに自分の身にふりかかっているように感情を追体験できるものです。
残念ながら性行為など更にそれが顕著でもあります。
まるで知らない事を、本やネットで聞き齧ったり、机上でこねくりまわして仕上げたような作品になっているのが残念でした。
文章は書き慣れた感じがありましたが、必要なのはそこではなく、リアルな人生経験(成功体験ではなく、失恋して身が裂けるほど悲しい、努力しても手に入らなくてはを食い縛るほど悔しい、など、心に振り回されるような経験)と、恋愛に限らず深い愛情の相互交換、人を慈しむ庇護の心の発見という、根本的の部分だと思います。
理路整然とした文章力以前に、人間的に深くなった時、恋愛やセンシティブな表現に血が通うものだと思います。
頑張ってください