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第3話
カフェ〝PRIMAVERA(プリマヴェーラ)〟は優が前々からずっと来たいと思っていたカフェだった。
小洒落たカフェで、テラス席もあり花壇などあって緑に溢れているPRIMAVERAはカウンターとテーブル席がある。
小さめなカフェだが、珈琲や紅茶、ケーキ類の他にも軽食がありリーズナブルな価格なのでなかなか繁盛しているようだった。
ドアを開け、店に入ると控えめな鈴の音がした。
漆喰と木でできた店内には絵画や観葉植物が飾られている。
「いらっしゃいませ。」
店内を観察していると、物腰の柔らかい店員に迎えられた。
--うわ、綺麗な人・・・モデルとかかな?
思わず顔を凝視すると、その店員は目を柔らかく細めて「お好きな席へどうぞ。」と言った。
その声まで柔らかくて優は落ち着かない気分になる。
何とかカウンター席に座ると、そっとメニューを差し出される。
髪は短いが前髪が長めで緩くカールしていて、大きくて少し垂れた目に薄い唇。
所作ひとつひとつが丁寧で、失礼かもしれないが優は女性よりも繊細さや清潔感を感じた。
メニューを見ると、可愛らしくレタリングされて見やすかった。
〝オススメ〟と書かれたページには数種類のワッフルとカフェラテの写真が添えられていた。
その中からカフェラテと、ベリーソースのワッフルを選択して伝えると店員はやはり笑顔で「少々お待ち下さい。」と言った。
それから暫くして、温かそうな湯気のたったカフェラテとワッフルを持ってあの店員が現れた。
「どうぞ。」
やはり、優しく微笑んで。
-指細い・・・指まで綺麗だ、この人。
皿を置く時の所作一つをとっても丁寧で、柔らかい印象を感じさせる。
一体何者なんだと思わず不躾な視線を送ってしまい慌てるが、やはり店員はにっこりと笑い「ごゆっくり。」と言って戻ってゆく。
彼の作った美味しそうな香りのカフェラテに、ほっと息を吐いた。
そのことでやっと自分が緊張していたのだと気づいた。
店内には柔らかな空気が流れていて、各々の時間を満喫している。
まるで先程の店員の彼の雰囲気を纏った店内は時の流れをゆっくり感じさせる。
しかしそれは決して不快ではなく、寧ろ優は幸福感さえ感じた。
ただ彼の近くにいるとその心地良さから苦しくなるのだと、優は気づいた。
-幸せは、怖い。
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