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第9話
--どうしたら、仲良くなれますか?っと。
画面をタップし、交換日記の書き込みを完了させる。
くるりと黒猫が一回転し『書き込み完了』のフキダシが現れる。
今回書いたのは崇とどうやったら仲良くなれるかということについてだ。
崇は嫌な奴だ。
優に意地悪ばかりするし、口も悪く無愛想だけどふとした瞬間に悲しそうな顔をしている。
そういう時は大抵春日のことを見ている。
きっと崇は春日のことが本当に大切なだけなのだと優は気付いた。
意地悪だけど優を嫌っているわけではない、春日の負担に優がなるのではないかと心配しているようだった。
心外だが優が至らないことは事実だしよく考えてみれば崇のいうことも一理ある、ただ崇はそれが極端だが・・
「明星が昇っても
眠らない街を僕は歩く」
つけっぱなしのテレビから最近よく耳にする曲が聞こえた。
人気歌い手と期待の新人作曲家の歌で、男女問わず絶大な人気を誇っている。
自分には関係の無い話だとチャンネルを変える。
「あれ・・・」
バイブレーションよともに聞こえるのはたった一人にしか設定していないラヴソング。
光輝である。
「もしもし?」
「久し振り、優!」
随分機嫌の良さそうな声に思わず訳をきくと、どうやら某有名テーマパークのチケットが手に入ったらしい。
「良かったじゃん!光輝あのネズミ好きだもんね。」
想い人の幸運に思わず笑みがこぼれる。
「えっと、それでさ・・・優も俺と一緒に行かない?」
逡巡した後に告げられた言葉に思わず睫毛を瞬かせた。
ーー今、なんて・・・?
期待してはいけないと思うのに、期待することをやめられない。
「お、俺でいいの・・・?」
おずおずと返すと光輝は声を立てて笑った。
そのことに少しびくついたが、どうやら遠慮している優が面白かっただけのようだ。
「遠慮すんなよ、お前がいいから誘ったんだろ?」
「・・・ぁ。」
「来てくれないと・・・困る。」
僅かに掠れた声が耳孔を擽る。
どくん、と胸が高鳴った。
早くなる鼓動と、微かな息苦しさが嫌じゃない、心地良い。
ーー期待しても、いいの・・・?
「ほら、ペアチケットだから。一人で行くのも虚しいし一番仲良いの優だし。」
「・・・」
付け加えられた言葉に絶望する。
ーーやっぱり、そんなわけないよね。
「・・・い、いつ?」
黙っていると不審に思われる、どこか冷静な脳が言葉を紡げと、大丈夫だからと優を動かす。
「いつでもいい、優の空いてる日に合わせるから。」
ーー大丈夫、想定内。
「じゃあ、明後日とか大丈夫?それなら空いてるから。」
胸が痛い。
縄でぎゅうぎゅう締め付けられているような圧迫感にそっと息を吐く。
「お、丁度俺も休み。じゃあ明後日な。」
暫く他愛のない言葉を交わし電話を切った。
「・・・はぁ。」
心が痛い、それでも断るという選択肢はなっかった。
そんな自分に嫌気がさした。
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