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第18話

崇の様子がおかしい。 具合が悪いということではなく、本当に〝おかしい〟のだ。 「ねぇねぇ、お兄ちゃん誰?」 「・・・優、だよ。」 ボケーっと赤い顔で見上げてくる崇は、姿は大人なのにまるで幼稚園児か小学生ぐらいに見える。 「・・・そっか、僕は崇。」 にこりと柔らかく笑う崇に、再度これはいつもの崇ではないと感じた。 そもそも、名前を聞かれること自体がおかしい。 毎年なると春日は言っていたが、毎年こうなるのだろうか。 訊ねたいが、春日は今忙しい。 「崇くん、お粥食べられる?」 取り敢えず、具合が悪いことに変わりはないようなので薬を飲ませる為にお粥を食べて貰いたい。 「うん。」 素直に頷くと、崇は口を大きくぱかっと開いた。 優はほっとするとお粥をレンゲですくうと、軽く冷まして口元まで運ぶ。 「・・・んっ、おいひぃ。」 ほわほわぁ、と頬を包み込んで呟く崇の姿は申し訳ないがすこし笑ってしまいそうになる。 どうやら熱か何かが原因で、崇の人格が幼い頃のものになっているようだ。 春日が年に一度この時期になると言っていたあたり、もしかしたら何か精神面での問題があるのかもしれない。 しかし、なんにせよ今日の崇は可愛らしい。 言葉に棘がなくなって、まるで崇ではないみたいだ。 「これ、かつおだしと昆布だしだよねっ!あとお醤油もちょっと!!回し入れたふわふわトロトロの卵ととっても相性がいい、三つ葉の香りもプラスして最高・・・」 (・・・あ、これ完全に崇くんだ。) 食事中に中身を予想して話すのは、崇の癖だ。 お粥も食べ終わり、薬を飲ませる崇は眠くなったようで目を擦ると眠り始めた。 額に冷却シートを貼り付けて、汗を拭き取る。 やはり崇の呼吸はすこし荒くて苦しそうだ。 「・・・さんっ・・・やだ、待って・・・!!」 それに先程から苦しそうに何かを呟いている。 「いか、ないで・・・」 苦悶の表情を浮かべ、微かに震える崇は先程とは反して顔が白く肌も冷たい。 かいているのは、普通の汗ではなく冷や汗のようだ。 呼吸がどんどん荒くなっていくにつれ、優の中の不安も増幅していく。 「・・・はぁっ、はぁっ、か・・・はぁっ、さん・・・!!」 「崇くん、崇くん・・・!!」 突然目を見開いて、喘ぐように息を吐き出す崇に優はどうすることも出来ない。 (どうしようどうしよう・・・!!) 「はぁっ!!はぁっ、っぐ、はぁっ・・・ぅっ、さん!・・・行かないで!!」 「崇くん!!」 思わず両手で崇の頬を強く挟むと、崇の瞳に意思が戻った。 「・・・っはぁ、はぁ・・・お前、なんで・・・ここに来て・・・はぁっ」

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