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告白
ポカンとする遥翔を他所に、新は話を続けた。
「ハルと香織、仲良かったし…、もしこのまま付き合うようになっちゃったら嫌だなって思ってたんだ。ハルが香織のこと好きなのはわかってたから、2人が並んでるの見るとわざと間に入ったりしてたし。絶対2人きりにさせないようにしてたしね。」
それは遥翔も気づいていた。
だから、新はてっきり香織の事が好きなんだと思っていたのだ。
香織もそう思っていたからこそ新に告白したのに、新はなかなか付き合おうとしなかった事がどうにも腑に落ちなかった。
香織に理由を聞いてもいつもはぐらかされ、新に聞いてもやはりはぐらかされた。
「ハルが好きな香織を僕のにしちゃえば、ハルは誰のモノにもならない……って、その時はそれしか考えられなかったんだ。ハルが香織以外の誰かを好きになる可能性なんていくらでもあったのに、香織に渡さないって事しか頭になかった。実際、ハルは僕と香織が付き合い始めてからもずっと他の誰かに気持ちが向くような素振りはなかったし。けど……ハルがイタリアに行くって言い出した時はかなり焦ったよ。もしイタリアで好きな人が出来たらどうしようって。」
「新……」
「でも、新は修行で精一杯で、恋愛してる暇なんてないっていつも言ってたから…それを信じるしかなかった。ホントは、すぐにでもイタリアに行ってハルの側にいたかったよ。」
遥翔も、新と香織が付き合い始めたのをきっかけに、新の事を諦める良い機会かもしれないと、他の誰かを好きになろうとした時期があった。
けれどそれはただの徒労に終わった。
それが男であれ女であれ、どうしても新と較べてしまうし、新以上に好きになれる気がしなかった。
新が顔を少しずらしたおかげでライトの反射がなくなり、ようやく焦茶色の瞳が見つかる。
新の話はきっと嘘ではない。
新は嘘をつく時、瞬きが増える。
けれど今の新は瞬きひとつせず、ただ泣きそうな顔で言葉を紡いでいた。
だからこそ、遥翔の中にひとつの疑問が生まれた。
「新…、ひとつ聞いていいか?」
「なに…?」
「香織と付き合った経緯はわかった、けど、結婚は?本気で好きでもない相手と結婚なんて出来ないだろ?」
「そ…っ、………。」
遥翔の問に一瞬口を開きかけた新の唇がキュッと結ばれ、視線がずれる。
「新…?」
「……ごめん、それは……言えない。」
「なんで…」
「それだけは、言えない。……ごめん。」
「新……。」
今まで見た事のない新の辛そうな顔に、遥翔のほうが泣きそうになる。
「……今まで何度も諦めようとしたし、この気持ちを伝えちゃいけないってずっと思ってたけど、やっぱりダメだった。ハル、僕はハルが好きだよ。ハルだけが好き。ハルしか好きじゃない。ハルじゃなきゃ、嫌だ。ハル……!」
「っ!」
頭上で拘束されていた手をグイッと引っ張られ起き上がると、新の胸に飛び込まされ、そのままきつく抱きすくめられる。
「好き……好きだよ、ハル、ハル…っ!」
「あら、た……」
これは、夢なんじゃないだろうか。
小さく震える新の背中にそっと腕を回しながら、遥翔は戸惑っていた。
ずっと恋焦がれてきた幼馴染みが、実は自分の事が好きだったなんて、そんな都合の良い事があるのか?
そして、遥翔はふと思い立ち、新に問いかける。
「あの、さ……新。おまえの言う、好き…って、どういう、好き、なの…?いや、ほら、その…お母さんを取られたくない、とかそういうほうの好き、なのかな…って思って。」
自分で言いながら、新の事だからその可能性も否定出来ないし、むしろそっちのほうがしっくり来るような気がして、遥翔はだんだんヘコんできた。
遥翔の問いかけに新は体をピク、と反応させると、抱き締めていた体を離し、遥翔の顎を捕らえ上を向かせると唇を奪った。
「───ん…っ!?」
突然の事に、遥翔の頭が真っ白になる。
(え、なに、俺……新に、キス、されてる…!?)
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