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懇願

柔らかな感触が唇から伝わってくる。 目の前にはレンズの向こう側で瞼を閉じている新の瞳。 あの日、罪悪感を抱えながら、泣き疲れて眠る新に、もう二度と重なる事のない唇を押し付けた。 どんなに願っても、自分のものにはならないのだと…思っていたのに。 新の瞼がゆっくり上がると同時に、重なっていた唇がそっと離れる。 新は戸惑う遥翔の額に熱を計る時のようにコツン、と自分の額を当てた。 「僕の好きは、こういう好き、だよ。ちゃんと恋愛感情でハルの事が好き。」 囁くように告白したその声は、少し掠れていた。 「新……。」 そっと抱き締められると、遥翔も新の背中に腕を回し、高鳴る鼓動に胸の痛みすら感じながら、一生言う事のなかったはずの一文を口にした。 「……俺も新が好」 「ハルも僕の事好きだよね。だって自分からキスしてくれたし。」 「……え」 一生分の勇気を振り絞った告白をまさかの当の本人に代弁され、更には自分だけが知っているはずの事まで暴露され、頭の中が一瞬真っ白になってしまう。 「僕の寝込みを襲ったこと、覚えてないとは言わせないよ?」 「おっ、襲ったわけじゃ…!」 「でも、僕が寝てるからバレないと思ってキスしたんだよね?確信犯だよね?」 「そ、れは…っ!」 確かにその通りで、遥翔は自分のした事がいよいよ犯罪じみているような気がしてきた。 「つか、あの時起きてたのかよ…っ。」 「いや、寝てたんだけど……ハルにキスされてるのがわかって、ここで起きたら絶対ハルは気まずくなって、僕と距離を置こうとするだろうなぁと思ったからそのまま寝たフリしたんだよね。」 「な…っ、なっ…!!」 あまりにもしれっと言い放つ新に、遥翔は顔を真っ赤にしながら、餌を強請る鯉のように口をパクパクさせる。 新は抱き合っていた体を一旦離すと、遥翔を見つめた。 「な、に…」 「ねぇ、もう一度ちゃんと、キスしたい。」 「!」 「あ、でもその前にハルの告白聞きたい。僕のことが好きだって。」 「!…言わねぇ!」 「なんで?僕のこと好きでしょ?」 「それをさっき言おうとしたのにお前が遮ったんだろーが!」 「え?そうなの?それはごめん。今度はちゃんと最後まで聞くから!ね?」 「絶対嫌だ。」 「そこをなんとかお願い、ハル!聞きたい聞きたい聞きたい」 「あーもー!うるせぇな!」 「聞……っ」 好きだと言うまで引き下がりそうにない新の胸ぐらをつかむと、グイッと引き寄せ唇を奪う。 「……お前より、俺のほうが好きだっつーんだよ。ばーか。」 「…………ごめん無理。」 「は?…うわっ!!」 新が何か呟いたのを聞き返そうとした瞬間、再びベッドに押し倒された。 「いっ…て、コラ、新…」 「そんな可愛い告白されて、平常心でなんていられるわけない。…もしかして、僕のこと誘ってる?」 「は?何言っ………おい、なに、固くしてんだよ…っ。」 両手首を押さえつけられたまま上に覆いかぶさってくる新が、既に熱が集まっている中心を押し付けるようにして体を重ねてくる。 「そりゃ、健康な男子ですから。大好きな人とベッドにいたらこうなるのが普通でしょ?」 「おまえがベッドに押し倒したんだろーが!」 「でも、嫌じゃないでしょ?ハルもまた固くなってきてるし。」 「っ!」 ジーンズの上から屹立を握られ、遥翔の腰がビクリと跳ねる。 「ねぇ、ハル…したい。ハルとひとつになりたい。……もう、我慢しなくていい、よね…?」

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