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最終バス 3☆
「ぅっ……!」
とうとう俺は、耐え切れずに男の手の中に射精してしまった。
達した快感にしばらくはぼーっとしてしまったが、バスが大きく揺れたおかげで我に返る。
その揺れ方は終点に着いたバスが回転場で向きを変えている揺れ方だったので、俺は慌てて通常サイズに戻ったモノを下着の中にしまう。
その間に、痴漢野郎は俺が吐き出したもので汚れた手をハンカチで拭きながら席を立った。
「待てよ!」
抑えた声で呼び止めれば、男は振り返った。
「えっ……」
振り返った男の表情に、俺は思わず言葉を失う。
どういうわけなのか、男は悲しそうで苦しそうな顔をしていて、その目は今にも泣き出しそうにさえ見える。
互いに言葉もなく見つめ合っているうちに、バスが停まって前側のドアが開いた。
それを合図に男は前を向いて歩き出した。
俺も立ち上がって後を追おうとしたが、立ち上がった拍子にまだ股間のモノをしまっている途中だったことに気づき、慌てて座り直して改めてきちんとしまってズボンのファスナーを上げる。
その間に、男は真ん中辺りに座っていたサラリーマンに続いてバスを降りてしまった。
そして、ようやく身支度を整えた俺がバスを降りた時には、男はもう、どこにも見えなくなっていた。
「いったい何なんだよ……」
バスの中で寝ていたところを痴漢に遭い、男の手で射精までさせられたのだから怒ってもいいはずなのだが、最後に男が見せたあの泣きそうな顔のせいで、俺の中から怒りは消え去っていた。
そして怒りが消えた後に残ったのは、自分でも説明のしようのない、何だかもやもやとした思いだった。
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