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告白 2

「え、あれ、じゃあ俺と大学が同じなのって、まさか」 「すいません。どうしても中村さんと同じ大学に行きたくって。  あと、実は高校も同じところで……」 「うわっ、高校もかよ」  俺と同じ高校や大学にしても、俺は何年も前に卒業していて同時期に通えるわけでもないのに、そこまでして俺とつながりを持とうとした橋場にドン引きである。 「すみません、やっぱり気持ち悪いですよね」 「いやまあ正直引くけど、気持ち悪いってほどじゃ」  見るからにしょんぼりしている橋場に思わずそう返したが、橋場は小さくなったまま、こう続けた。 「自分でも気持ち悪いって思ってたので、女の子を好きになろうと努力したり、ちょっといいなと思った同性の先輩や先生に目を向けようとしたりもしてみたんです。  でもやっぱり、どうしても中村さんのことしか好きになれなくて。  だから見てるだけなら中村さんに迷惑かけることもないし、このままでいいかと思ってたんですけど、中村さんが就職して車で通勤するようになってからは、一瞬しか姿が見られなくなって辛くって。  そのうちに中村さんが毎週金曜日だけバスに乗ることに気付いたので、大学に入ってからは同じバスに乗るようになって、それでここ最近は満足できてたんです。  けど、この前は中村さん寝ちゃってて、すごく無防備で、スマホの自撮りモードでその姿を盗み見してたらムラムラしてきてしまって……」 「あー……」  話を聞いても橋場がなんで俺みたいな男しか好きになれなかったのかは理解できなかったけれど、橋場が俺に痴漢行為をした理由は理解できた。  俺自身、橋場くらいの年齢の頃は頭の中がエロいことでいっぱいで、好きな女子の何気ない仕草やチラ見えする肌にムラムラして、頭の中でその子をめちゃめちゃに犯したりしたものだ。  だから、頭の中で妄想するだけか、実際に行動に移すかの違いはあるけれど、俺も同じ男として橋場の気持ちはわからないでもない。 「けど、ムラムラしたからで許される話じゃありませんよね。  本当に申し訳ありませんでした。  お詫びに僕に出来ることなら何でもさせてもらいますし、警察に自首しろって言われるならそうします。  僕が中村さんの近所に住んでいるのが嫌だったら、大学の近くに下宿することにして引っ越すので……」  橋場は俺に誠意を見せようとがんばっているが、その顔は辛そうで悲しそうだ。  今にも泣き出しそうなその表情は、あの日、バスの席を立つ時に橋場が見せた表情によく似ている。  そうか、あの時こいつが泣きそうな顔をしてたのは、好きな人にひどいことをしてしまったからだったのか。  ずっと気になっていた橋場のあの表情の理由を、俺はようやく理解する。

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