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ポッキーの日
カタカタカタカタ……
ランドセルを揺らしながらボクはお家を目指して急いで走る。
今日はお隣のお兄ちゃんが学校が終わったらお店においでって、朝学校に行くときに言ってくれたんだ。
ボクのお家のお隣にはボクの大好きなお兄ちゃんのケーキ屋さんがある。お兄ちゃんの作る美味しいケーキも大好きだけど、それより何倍も大好きなお兄ちゃんに誘われたのが嬉しくて帰りの会が終わるのと同時に教室を飛び出して急いで帰ってきた。
お店の前まで来たボクは息を整えてお兄ちゃんのいるケーキ屋さんの中をこっそり覗く。色とりどりの美味しそうなケーキがたくさん並ぶショーケース。その向こう側にお兄ちゃんの姿が見えた。
お兄ちゃんはいつもの優しい笑顔で綺麗なお姉さんと楽しそうに話してる。お兄ちゃんのお店は美味しいケーキとイケメンの店員さんがお客さんに人気なんだ。
お店はお客さんがいっぱいでお兄ちゃんは忙しそうだった。お母さんから忙しいときはお邪魔しちゃいけませんって言われているからボクはお家に帰ろうとした。
「ちーちゃん!」
カランコロンと鈴の音がしてお兄ちゃんがボクを呼ぶ声がした。
「…ケンお兄ちゃん」
「もう学校終わったの?」
ボクが頷くとお兄ちゃんはいつもの優しい笑顔でボクの手を握ってお店に招き入れてくれた。
「ちょっと待っててね」
お兄ちゃんはそう言ってボクをカフェスペースに座らせて、他の店員さんにお客さんを任せて厨房に入っていった。
そうしてしばらく待っているとボクの前におっきなチョコレートパフェが置かれた。
「うわぁっ!おっきい!」
「ふふっ、ちーちゃんチョコレート好きだったよね?」
笑顔でパフェを、出してくれたお兄ちゃんがそう聞いてくれる。
「うんっ!だいすきっ!」
バニラとチョコレートのアイスクリームに色とりどりのフルーツがいっぱい乗った美味しそうなパフェ。
その上にはたくさんのチョコレートソースが掛かっていてポッキーも刺さっている。
「良かった。おばさんには言ってあるから心配しないで食べてね」
「わあっ!ありがとうケンお兄ちゃん」
大好きなパフェにスプーンを伸ばそうとしてどうしてパフェをご馳走してくれるのか不思議に思ったボクはお兄ちゃんに理由を聞いてみた。
「この間のハロウィンでイタズラしちゃったでしょ?そのお詫びにね」
イタズラ…?お兄ちゃんがボクの頬っぺにチュッ!ってしたことかな?でもその後いっぱいお菓子貰ったしボクぜんぜん気にしてないのになぁ?
なんだか悪い気がしてポッキーを、くわえたまま戸惑ってると
「じゃあ少しだけ分けてくれる?」
そう言ってお兄ちゃんはボクが食べてたポッキーの反対側をくわえて食べ始める。
ポリポリって音のあとにチュッ!って音がしてお兄ちゃんのお顔が離れていった。
「ご馳走さま、ちーちゃん」
そしてお兄ちゃんはボクの頭を優しく撫でてお客さんのところに戻って行ったんだ。
*****
ちーちゃん…お隣のお兄ちゃんが大好きな小学3年生の男の子。
ケンお兄ちゃん…父親のケーキ屋を継いでお洒落なパティスリーに改装した24才のオーナー兼パティシエ。お隣のちーちゃん家とは昔からの家族ぐるみのお付き合い。
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