6 / 14

5ターン目

跳ね起きると、急いで着替えて朝食も食べずに家を飛び出した。 家に籠っていても駄目なら逃げ回るしかない。 キースが来る前に部屋を出て仕事へ向かう。 城への道中、人と目を合わさない様に帽子を深くかぶってこそこそと魔導士塔へと向かって歩く。 不審人物みたいだけど、魔導士はわりとそういう人が多いので、あまり注目はされずに済む。 城で勤める人たちの流れに紛れて歩いていると…… 「リム、今日は早いんだな」 後ろから肩を叩かれて、体が跳ね上がる。 「キ……キース……」 帽子をギュッと握り、目深にかぶり直す。 「どうした?今日は様子がおかしいな?体調でも悪いのか?」 顔を覗き込まれそうになって、慌てて顔を背ける。 「寝不足で……酷い顔してるから……」 「何!?何か悩みか?……まさか、誰かに殴られたとか……」 帽子の鍔を捲られ顔を覗かれて……キースの琥珀色の瞳と目が合う……。 慌てて帽子を被り直そうとするが手首を掴まれる。 「……っ!!」 無駄だろうがいつでも魔法を放てる様に気を張りつめる。 「確かに……顔色が悪いな……大丈夫か?あまり無理せずに辛ければ医務室へ行くんだぞ?」 魔導士塔と騎士団の演習場への分かれ道まで来て、塔の入り口までついて来ると言ってきかないキースを何とか宥め分かれて、小さくなっていく背中を見送った。 「…………」 何でだ? 目は合っていた……目が合う事が条件じゃないのか……? 今と、あの時の違い……室内と屋外……とか? 取り敢えず助かった……。 魔導士塔へ向かう途中、同期のミランに呼び止められた。 念の為、目は……合わせないように気をつけよう。 「おはよぉ、朝から見せつけてくれるじゃないか。今年一番注目の新人騎士キースだろ?将来安泰だな」 バンバン背中を叩かれる。 キースとのやり取りを見られていた様だ。 先程のやり取りの何処が見せつけなのかわからないけど………安泰ねぇ………。 ベルべラット国は同性婚を禁止はしていない……見目も良い、将来有望な騎士。 性格も明るく正義感に溢れている。 まぁ優良物件だよな……。 俺は……恐怖感が植え付けられたので無理。 いや、ずっと側に居たので、兄弟みたいなもんで……そういう目では見れない。 そんなキースをあんなに狂わせるなんて、本当にこの呪い許せない。 ぼんやり考え事をしていたら、目の前にミランの顔。 「あ………何?」 しっかり目が合った。 慌てて目を手で覆う。 ドクドクと心臓が早まる……どうなんだ? ……ミランの様子をそっと伺う。 「何か様子おかしくないか?体調悪いなら、今日の演習は休ませて貰った方が良いんじゃないか?」 演習……そうだった……。 今日、俺達第一隊は先輩達の班と新人の2班に別れて実戦訓練だった。 実戦訓練と言う名の新人イビりとも言われているが……。 この訓練で放った魔法が暴走して、演習場の待機所を大破させて始末書を書かされていたんだった。 それがなければ、こんな呪いに掛かることも無かったかもしれない……いや、誘惑に負けた俺のせいなんだけど……。 「……出ないと逆に目をつけられるじゃん……何とか逃げ回るよ」 「応戦しろよ。潜在魔力は随一だって団長に太鼓判押されてんだろ?」 ミランはニヤニヤ笑ってこちらを見る。 くそ………。 「わかってる癖に……良いよな……お前は次期隊長だって噂だもんな……」 実力もそうだが、ミランの親父さんは別隊の隊長をしている。 新人の中では一番の出世頭。 「ん~?親が立派ってのも大変なんだぞ?」 俺にはわからない苦労があるんだろうが、潜在魔力が有ったって表に出せなきゃ無いのと一緒だと、サイラス隊長に散々言われ、それに加えてノーコンで対象物に当てることが出来ない俺より全然マシだろう。 「体で入団したって言われるより良いだろ?」 おれが黒の魔導士団に入れたのは奇跡の様なものだ。 団長や隊長達に体を売って入団したと噂されている。 「おはよう、リム。今日の演習頑張れよ」 魔導士塔に到着しジョイ先輩とうっかり目が合ってしまったが変化はなく、全く発動条件がわからなくなる……。 「………お手柔らかにお願いします」 目が合ったらかと思ったが違った。 室内、屋外の差かと思ったがそれも違うようだ。 条件は何だ? 思い出したくもないが、必死に記憶と向き合い相違点を探す。 糸口も見つけられないまま、演習が始まってしまった。 まず新人が森の中に隠れて、それを先輩が追いかける。 隊長、団長の目がない分、目をつけた後輩を死なない程度にいたぶってくれる………最悪な演習。 取り敢えず逃げよう。 足に強化の魔法をかけて森の中を走り抜ける。 1番奥へ……このスタート地点から離れよう。 そうすれば、手元が狂っても待機所を破壊することは避けられる……。 森の最奥。 国の結界間際の木の上で身を潜める。 結界間際には強い魔力が漂っているので感知されづらい筈。 息を潜めていると…… ドォォォン、ドォォォンと何かが結界を壊そうとしている……。 何……?何が起こっている……? 息をのんでその箇所から目を離さないようにしていると、ピシピシと結界に穴を開けて入り込んできたもの……魔獣ゴルゾーラカウだ。 俺一人で何とか出来る相手ではない……。 魔導士団の一隊でやっと相手に出来る相手だ。 下手に逃げを打つよりは、ここは静かにしてやり過ごし、報せを飛ばそう。 気配を消して、ゴルゾーラカウの動きを見張っていると、先程の結界の穴から一人の男が入ってきた。 「ご苦労様。もう行って良いよ?」 ゴルゾーラカウを子犬に対するかの様に頭を撫でている。 何者だ……? 嫌な汗が頬を伝っていく。 「カイル、待っててね。今会いに行くね………ん?何かいるな?」 気付かれた!! いや、まだ場所迄は特定されてない筈……ゆっくりと足に強化の魔法をかける準備をする。 「この変かな?」 男がこちらに手を向けた瞬間、巨大なエネルギーの球が放たれた。 辺りを一掃する気か……!! 足を強化し木を蹴って飛ぶ。 直撃は免れたが爆風に吹き飛ばされ……。 丘を転げ落ち……勢いを止められず崖の下へ………。 「リム!!」 誰かの声を聞いた………。 ………ピチョン………ピチョン………。 水滴の落ちる音……。 「ここは…………?」 目を開くと洞窟の様だ。 焚き火の明かりが煌々と辺りを照らしている。 「くしゅんっ!!」 体がぶるりと震える。 髪からは水が滴り落ちて、気づけば裸。 濡れた俺の服が干されている。 「気がついたか!?リム!」 洞窟の入り口から、木の枝を抱えたミランが入ってきた。 「覚えてるか?崖から落ちて川に流され…………」 ミランの動きが止まり、木の枝がバラバラと足元に散らばった。 ま……まずいっ!! 逃げ出そうとしたが、体が脱力しきっていて起き上がれない。 強化魔法を極限に高めた反動か? そんな俺の体をミランが抱き上げて膝の上に向き合って座らされる。 「体温が低すぎだ……今暖めてあげるね、リム」 そう言ったミランの瞳には炎の影が燃えていた。 「あっ!あっ!あぁぁぁっ!!」 力の入らない体をミランに預けて、下から突き上げられる。 「リム、入団式の時からずっとお前とこうなりたかった」 自重で深々と突き刺さるミランのモノに快感を与えられながら、考える。 今回は諦めて……次の為の糸口を…… 「親のコネだ何だと陰口をいう奴らばかりの中、お前だけは普通に接してくれた………ソレがどれだけ嬉しかったか………」 「あっ!……まや……かしだ……お前は……あっあっはぁっ……呪いに引き摺られている……だけっ……あぁ!」 膝を抱えられて、さらに深く突かれ、激しく揺さぶられる。 ゴリゴリと肉壁を擦って腹側を刺激された時、目の前が真っ白に染まるような電流に似た刺激が脳を突き刺し、何度目かの射精が二人の腹を汚す。 もうほぼ無色に近い……。 長い……長すぎる。 ミランだって、もう2度精を放っている。 なのに、終わらない……。 何が違う? ゆっくりと下ろされて、二人の衣服を重ねた上に寝かせられ、正常位で挿入される。 「あ…ひっ……あぅっ………!!」 キースと先輩は俺の部屋……今は洞窟。 キースも先輩もミランも目を合わせるまでは普通だった。 でも通勤中と魔導士塔で目を合わせた時は何とも……。 ………そうか……二人きりの状況だ……二人きりで目を合わせた。 ……そして1回を終える条件はきっと………。 「あんっ!はんっ!ミ……ミラン………中に……中に出して……あぁっ!」 ミランは俺の顔に出したがり、俺の顔はミランの精液でデロデロだ。 「リム!好きだ!!俺の……俺のモノを受け止めてくれるのか?」 なんて体力だと思うほどの速い律動。 「あ、あ、あ、あ………ミランの!ミランのいっぱい頂戴っ!!あぁんっ!!」 ミランの体がぶるりと震えて、俺の中にミランの吐き出したものが広がった。 景色が白くぼやけていく……。 やっぱり………終わりは……中出し……か。 なんて悪趣味な呪いだ……。 負けない………。 絶対乗り越えてやる…………。 俺はゆっくりと目を閉じた。

ともだちにシェアしよう!