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8ターン目

一枚、一枚…皮を剥いでいくように、心が少しずつ壊されていく……。 上手く呪いから解き放たれても人間不審になりそうだ。 この呪いから抜け出してカイル団長と幸せになる。 そんな夢だけで前へ進んだ。 途中、後を追いかけてきた何度目かのキースの話に何となく相づちを打ちながら、この後どう動くかを考える。 演習は2人きりになる確率が高い……図書館は……嫌だ。 医務室……は危険そう。 と、なると……一番安全な場所はあそこしかないな……。 「カイル団長……申し訳ありません。体調が優れず、本日の演習はお休みさせて頂けませんでしょうか……」 一番安全な場所と言えば団長の側しか無いだろう。 団長になら、襲われても喜びでしかないし。 団長は心配そうに俺の顔を覗き込んでくる。 「確かに顔色が悪いな……医務室で休むか?」 仮病を使ってごめんなさいと心が痛む。 「ご心配頂き、ありがとうございます。体を使うのは厳しいですが、内勤なら……カイル団長のお手伝いをさせて頂けませんでしょうか?雑務でも何でもしますので……」 俺の言葉に団長の目が僅かに見開かれ、 「リムが俺の手伝いを……?」 役不足なのは重々承知している。 少し考えていたが、団長は了承してくれた。 ……とはいえ、俺にやれることなんて限られている。 書類の作成は魔導士団の機密事項もあるので、詰め所内の掃除やら備品を取りに行くぐらいのお使い程度。 取り敢えず、団長や詰め所に残っている隊長達にお茶を出す。 「ありがとうリム・アゼリア。でも体調が悪いなら無理をするなよ?」 「そうそう、リムがいるだけで団長の仕事の進みが早いからここに座ってな」 ヴァンス副団長に席を譲られ、断ったが強引に座らされた。 「???……ありがとうございます」 これでも読んで勉強してろと、魔術書を渡される。 また無駄に終わるだろうが、いくつか呪い返しの魔術を読みながら、術式を頭の中に思い浮かべながら唱えてみる。 やはりどれも変化はない。 視線を感じて顔を上げると団長と目が合った。 「随分熱心に読んでるな?わからないなら教えようか?」 「団長!あんたはやる事あるだろ!」 立ち上がりかけた団長を副団長が制した時、勢い良くドアが開いた。 「団長!魔獣の件でお話があります!!」 慌てて部屋に飛び込んできた人は騎士団の人の様だ。 その緊迫した様子に、 「ヴァンス、リムを奥の部屋へ」 副団長に促され、奥の部屋へ移動しかけた時、 「カイル〜!!会いたかったよ!!」 1人の男が飛び込んできて、団長に飛びつき……キスをした。 団長は慌ててその身を離す。 「……ネヴィル……何でここに……!?」 「カイルが会いに来てくれないから、会いに来ちゃった」 可愛らしく笑うその男は……演習中、森の中で結界を破って侵入して来た男。 ……誰? 団長の……恋人? 目の前の光景に固まっていると、副団長に部屋へ押し込まれた。 もめる様な声が聞こえて来る。 何が起こっているのか知りたい……。 鍵をかけられたのかドアは開かないので、窓から出て建物の出っ張りを足場に隣の部屋の様子を伺った。 このわずかな間に何が合ったのか知らないが、例の男の顔が怒りに燃えている。 「……許さない……僕のカイルに……そうだ!!悪い蟲がつかない様におまじないを掛けて上げる!!呪縛!!」 団長に向けて魔術が光の玉となって放たれた。 危ないっ!! 窓から飛び込もうとしたが、団長はローブを脱いでローブで魔術を包み込んだ。 「本当に危険なヤツだな……捕縛!!」 しゅるしゅると蔓草が伸びて男をぐるぐる巻きにした。 「カイルっ!!僕はカイルの為にここまで来たのに!!人を殺したのだって、牢獄を破ったのだってカイルの為なんだよ!?」 男が団長を見上げ、叫んでいるのを団長は冷めた目で見下ろす。 「……知るか……お前は牢屋に入ってろ」 団長が男の頭に触れると男の姿が消え、団長は周りに指示を出している。 やっぱり、あの男が呪いの正体だったのか。 団長とどういう関係なんだろう……キス……してた……。 団長の為に人を殺したって……。 部屋に戻ろうとした時、いきなり突風が巻き上がり……。 「あ………」 足がすべって俺の体は真っ逆さまに落ちていった。 ……死んだらどうなるんだろう? また朝に戻るのか?死んだままなのか? 衝撃を覚悟して目を閉じた。 トンッ…… ……? 覚悟していたよりもずっと、ずっと優しい衝撃。 「本当にお前を見ているとハラハラするな」 団長の腕の中で地面に降り立っていた。 団長に助けて貰った……ヒーローの顔を見たいけど、怖くて顔を反らす。 「す……すみません」 た……隊長の体温が伝わって来る……。 「俺は騎士団の方へ用ができたから外出するが、お前は医務室で休んでろ」 「いえ……この後は内勤で魔具の在庫管理が……」 隊長の足はもう医務室のある白魔導士の塔へ向いている。 「隊長命令だ。サイラスには俺から伝えておく」 せめて降ろしてくれないだろうか……。 今の人は誰なのかとか……キスをする様な関係なのかとか……。 余計な事を聞いてしまいそう……。 俺の呪いの根源の人だし気になるけど、もし恋人だなんて言われたら……呪いに立ち向かう気力すら奪われてしまう。 知らなければ未来を夢見て頑張れる。 団長……あの人は誰なんですか……? 言葉を飲み込んで、俺を軽々と抱き上げる団長の胸に顔を埋めた。 医務室につくとやっと降ろされて、団長は誰かを呼び出した。 「お、久しぶりだな。お前が医務室に来るなんて珍しいな」 「メイナード、ちょっと面倒な事になってな……この子を預かっていてくれないか?」 え?俺? 「リム、こいつは俺の学友だ。信用して良い……」 お願いしますと頭を下げてから顔を見ると…… 「……あ、副会長……」 団長が学生の時、一緒に生徒会をしていた方だ。 「ん?後輩か?よろしくな」 「え!?リムはこいつの事、覚えてるのか?」 魔導士、騎士、官吏候補が一同に集う学園。 人数も半端ないし、5年も前の事……交流が無ければ忘れているとこかも知れないが、生徒会長をしていた団長の横に常にいた副会長の顔はしっかり覚えている。 「もしかして……俺の事も……覚えてたりする?」 もしかしても何も……その時の姿に一目惚れしたのだから忘れる訳がない。 その時の団長の姿を思い出して……かぁぁっと頬が熱くなった。 「へぇ……なるほどね……面倒な事ってのはネヴィルの事か?安心しろ誰も近づけさせねぇよ」 ニヤニヤと笑いながらメイナードさんが団長を見ている。 「そうだよ……後は頼んだぞ」 そういうと団長は走って行ってしまった。 「え〜とリムだったか?こっちだついて来い」 メイナードさんの後をついて行くと個室の病室に案内された。 「ここは重傷患者や要人用だから外部から侵入しにくい……安心して休んでいろ」 「なんで特別室なんですか?」 俺、本当にどこも悪くないんだけど……。 「ちょっと厄介なヤツが脱獄して来たみたいで……そいつを用心しているんだろう」 「……ネヴィルって人の事ですね?」 メイナードさんに突然、頭をぐしゃぐしゃとかき回された。 「そんな顔をするなよ。あいつの事は覚えてないのか……ネヴィルはカイルの親衛隊にいたんだが……段々壊れていってな。カイルに近づく全ての人間に呪いを掛け……死亡者まで出たんだ……箝口令がでたから知らなくても無理はないが……割と噂にはなったんだけど……まぁ、それで投獄されたんだが……そうか、脱獄したか」 恋人……と言うわけではないんだ……ほっと胸を撫で下ろす。 呪いに立ち向かう気力は保てそう。 「でも俺、別に団長の側にはいませんでしたよ?……それにその人はもう団長が捕まえていましたし……」 「ん〜……ネヴィルのヤツは狡猾でえげつないからなぁ……魔力だけなら一流だったしな……」 それは、俺にかかった魔法の性質を見ればよくわかる。 「カイルめ……お前の事は相当、大事にしてるみたいだな。俺に頼み事なんて久方ぶりだ」 ははっ……と笑われて、頭をポンポンと叩かれ、思わずメイナードさんの顔を見てしまった。 メイナードさんの瞳に炎の影が……。 急いで逃げ出そうと思ったが、外から侵入しにくいこの部屋は、裏を返せば助けがくることがない。 施錠をしたメイナードさん以外は……外に逃げる事も出来なかった。 「やめ……ぅ……やめて……くださ……んん」 俺の中を掻き回す長い指……。 人体を知り尽くした白の魔導士の医務班……さすがというか……的確に快感を与えられ、拒絶したいのに抗えない……。 「……くそ……なんで…逆らえない……この子はあいつの……くそっ!!」 学生時代、仲の良かった2人の姿を思い出す。 ……背徳感を抱く。 団長を好きだと言いながら……団長の親友と……酷い裏切り行為だ。 メイナードさんは学生時代から団長と肩を並べていた実力者。 全ての攻撃を交わされて、もう為す術もない。 実力者故に……メイナードさんも、完璧に自我を呪いに奪われることなくギリギリのところで苦しんでいる。 ……………俺に今出来ることは……。 「メイナードさん……ごめんなさい……俺に掛けられた呪いのせいなんです……行為が終われば今日の事はリセットされますので……お願いします。抱いて下さい……」 自分の意思でメイナードさんの首に腕を回した。 足を開いてメイナードさんを受け入れる。 「リム……?カイルは……この事に気付いているのか?」 額に手をあて、必死に呪いと戦っている。 「……わかりません。でも……もう何周かして、初めてじゃないんで……俺は平気なので……メイナードさん……苦しまないで下さい……」 ……団長に相談しようとも思ったが、団長には知られたくない……体は何も無かった事に戻るが、何人とも体を重ねてしまった記憶は無くならない。そんな自分を知られたくない。 そんな、ちっぽけなプライドから団長には告げられずにいる。 「………平気なんてっ!!そんな訳ないだろう!こんな事するのはどうせネヴィルだろ!!何やってんだ、カイルは!!」 メイナードさんはその拳を壁に叩きつけ……血がにじんでいる。 どこまでも優しくて、強い団長の友人……。 俺は、その拳を握るとメイナードさんの体に乗り掛かり……。 「リム!何をっ!?」 「うぅ……あ……ん…んん………」 自分の孔にあてがったメイナードさんのモノの上に腰を下ろしていく。 「か……はっ………あぁ、はぁっ……」 もう少し……もう少しで一番太いところが……… 「う……リム……やめ……ろ……くっ」 徐々に飲み込まれていくモノに、ついに呪いが理性に勝ったのか、メイナードさんの優しさか、俺の腰を掴むと自身のモノを突き入れた。 「うあぁっ!」 そのままベッドに寝かせられ、激しく腰を打ち付けられる。 狭い部屋に肉と肉がぶつかり合う音が響く。 「くそっ!くそっ!!くそぉっ!!!」 「あっ!うぁっ!あぁっ!!」 悔しさか、罪悪感か……二人で涙を流しながら傷つけ合う……。 こんな不毛な行為。 さっさと終わってしまえばいい。 メイナードさんのモノが俺の中に解き放たれ……。 白く染まる世界の中で……… 「リム!次は直ぐにカイルに呪いの事を話すんだ!良いか!?絶対話せよ!!」 メイナードさんの叫びを聞いた。

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