10 / 14
9ターン目
目を覚ますと、急いで支度をして、足に強化魔法をかけて職場へ走った。
メイナードさんとの約束を果たすため。
「カイル団長!お話があります!時間を下さい!!」
勢い良く上司の詰め所に突撃した。
「ヴァンス、ちょっと席を外す。奥の部屋へ行こう、リム・アゼリア」
あまりの剣幕に団長もただ事ではないと思ってくれたのか、話をちゃんと聞いてくれるようだ。
「それで……どうした?いつものお前らしくないな……何があった?」
「………実は……」
時間の流れを考えると、まだネヴィルの一件は起こってない。
途方もない話だが、団長は疑うことなく最後まで聞いてくれた。
「………リム……今は…何周目?」
俺の話を信じてくれたのか、目を合わさないように顔を背けてくれている。
「……えっと……9周目……だと思…」
言い終わる前に、力強く抱き締められた。
「リム……一人で良く頑張ったな………辛かっただろう」
優しい言葉を投げ掛けられて……涙が溢れた。
ずっと、ずっと押し込めていたものが溢れだす。
「団長!俺……俺……辛くて……逃げたいけど、逃げ場もなくて……でも団長、待ってるって……だからっ……だから!」
言葉も纏まらず、ただ泣き続ける俺の頭を撫でながら団長は抱き締め続けてくれた。
「俺が守るから……二人で呪いを乗り越えよう……リム、目を閉じていてくれるか?」
言われるままに目を閉じると……唇に柔らかく暖かいモノが触れた。びっくりして目を開けそうになるのを必死に我慢する。
「ん……団長……あ……」
「そんな可愛い声を出さないでくれ……俺がお前の邪魔をしてしまいそうだ」
唇が離れていく……。
うぅ……目を開けたい……。
団長となら、100周したって構わない……。
部屋の扉がノックされて団長が扉に向かう気配がする。
「団長、魔獣ゴルゾーラカウがこの王都の結界内で目撃されたと騎士団から通達が来ました。応援の要求です」
副団長の声……。
目を開けると団長と副団長が入り口で深刻な顔で話をしている。
「魔獣が……リムの話通りならネヴィルが来たと言うことか……」
「ネヴィル?奴なら投獄されている筈でしょう?」
団長は俺の方をちらりと見た。
ネヴィルの事を説明しようとすると俺の話をしなければいけなくなる……。
「とりあえず演習は中止だ。ゴルゾーラカウ以外の物も入り込んだ可能性がある。厳戒態勢を敷くように指示を出してくれ……第一隊は塔の守りを固めさせろ、第二隊はゴルゾーラカウの対応にあたらせ、、第三隊は街の巡回、第四隊は結界の点検、修復に向かえ………一人になることなく、常に二人以上で行動するように通達をだせ」
詰め所内が慌ただしくなる。
俺はどうしたら良いだろうか……室内をうろうろしていたら団長が戻って来た。
「リム、俺も出なければならない。この部屋に結界を張っておくがネヴィルは呪術と操術を得意としている……誰が操られているかわからないから、誰が来ても出て行こうとするなよ。もし、何かあったらこれを押すんだ」
何か筒の様な物にボタンが付いた物を渡された。
「俺に知らせが来る様になっている。すぐ片付けて戻る。待っていてくれ」
そういうと扉が閉められ、結界が張られたのか部屋全体に魔力の流れを感じた。
団長の魔力だ……。
団長が側にいてくれる様な気がして心が落ち着く。
何もない部屋で何もする事も無く、団長に守ってもらってる安心感から睡魔に襲われた……。
『……ん……んん…』
………誰かの……声がする。
『あぁ……カイル……もっとして……』
カイル……?団長?
『あぁんっ!カイル!もっと激しく突いて!!』
この声はネヴィル……団長と何を……。
隣の詰め所に続くドアを見つめる。
静かな室内にと湿った音が響く。
『カイル!カイル!あぁっ!大好き!!』
ここを出るなと言われた……。
出ちゃ……駄目だ……。
でも……何が起こっているのか……知りたい……。
魔法にかけられた様に、駄目だと思うのに手がドアノブに伸びた。
ドアノブに指先が触れた瞬間、バチッと火花が散って、ギィィィィ……と扉が勝手に開いた。
室内には座って体を交じらす2人の男……上で腰を振っているのはネヴィル……下にいたのは……誰?
団長ではない……サイラス隊長。
ネヴィルが首を傾けこちらを見た。
「騙されてくれて、ありがとぉ」
ニタリと笑うと立ち上がり、こちらへ歩いて来る。
「見てたよ?君、カイルとキスしてた子だよねぇ?」
急いでドアを閉めようとして、扉ごと吹き飛ばされる。
「雷撃!火炎!水柱……!!」
ゆっくりと近づいてくるネヴィルに持てる力をぶつけるが、片手で簡単に弾かれる。
ネヴィル手が俺の襟首を掴み、ネヴィルの顔が俺の首もとに近づく……。
「この匂い……俺の呪いだぁ……俺のカイルに近づく悪い蟲だねぇ?」
襟首を掴まれ持ち上げられると、隣の部屋に投げ飛ばされた。
「……遊んであげなよ……ただし中出しは駄目だよ?逃げられちゃう」
顔を上げると……サイラス隊長の手が伸びてきた。
足に強化魔法をかけて、蹴り飛ばしドアへ向かう。
………っ!?開かない!!
いくらガタガタ揺らしても扉は固く閉ざされている。
「無駄だよ、結界かけて出れなくしてるから……魔導士同士を戦わせてるから……カイルも忙しいだろうしね……邪魔もこない」
ニヤニヤと嗤うネヴィルに後ろから羽交い締めにされ、抵抗出来ないまま、隊長に服を破り捨てられた……。
「こんな体でカイルを誘惑したの?いい度胸だねぇ……身の程はわきまえた方が良いよ?」
ネヴィルから発せられる禍々しい魔力にガタガタと体が震える。
「カイルに近づけなくなる様に……可愛がって貰おうね?」
「あ……あ………あぁ」
後ろから膝を持ち上げられ、隊長に向けてお尻を晒される。
隊長がいきり立つモノを取りだし、近づいてくるのが見えているのに、冷や汗が出るだけで体が動かない……。
「………っっひぎっ!!!!!」
ネヴィルに晒し出された孔に戸惑いなく隊長のモノが撃ち込まれた。
痛みで体が痙攣するが、お構いなしに抜き差しされ……。
……壊されていく……激しい動きは快感を求めるものではなく、破壊するためだけの動き。
「ひっ!ひぐっ!あぁっ!」
何の感情もない虚ろな瞳で隊長は壊れた人形の様に腰を振り続ける。
「ふふふ……こんな汚れた体じゃカイルの前には立てないよねぇ……」
ネヴィルの手には団長から貰ったボタンが握られていた。
まさか……団長をここに呼ぶつもりか!?
「やめっ!あぅ……団長………やぁっ!!」
「本当は触れるのも嫌だけど……俺も手伝ってあげるね?」
体を反転させられて四つん這いにされると隊長に後ろから腕を捕まれて、
「……んっんぐっ!!」
ネヴィルのモノが口の中深く押し込まれた。
隊長の強い突きの反動でネヴィルのモノが喉の奥まで入り込む。
喉が詰まり、激しい吐き気に襲われる。
「ははははははははははっ!!見られたくない?見られたくないよねこんな格好!!見てもらおうよ!はははっ!!」
「んんんんっ!!」
体を捩るが抵抗虚しく、ネヴィルが団長から貰ったボタンを押した。
団長が……来てしまう……こんな格好を………見られてしまう。
「もうそろそろかな?」
ネヴィルのモノが口から抜かれ、白濁した液体を顔に振りかけられたその時………
「リム!何があった………っ!?」
団長が扉を開けた………………。
………………………………
体の内に爆発するような魔力が渦巻いて………
目の前が赤く染まった。
何がどうなったか覚えていないが…………
何もない……何も残っていない………塔はおろか………周囲の草も木も……全て焼き飛んだ。
団長の顔も、何も、見たくないと思った。
こんな悪夢は消えてしまえと思った。
俺が消した。
団長……これが俺の………実力……ですか?
ボロボロの格好でふらふらと立ち上がる……。
誰か……誰か…………この回を終わらせて……。
呪いが解けて皆が元に戻る確証は無い。
団長がいない世界で呪いが解けても意味が無い。
誰か……1日が終わる前に……俺を犯して…………。
歩き続けると、数人の騎士がこちらに走ってくる。
その中に……見つけた………。
魔法で騎士達を吹き飛ばす。
ただ一人、呆然と立ちつくす人物の首に腕を回した。
「俺を抱いてよ………キース……」
ともだちにシェアしよう!